「非公認」「比例選重複立候補を認めず」

その石破首相が党内分断を意に介さず、世論向けに断行したのが、旧安倍、二階両派の「不記載」議員への「非公認」「比例選重複立候補を認めず」という"追加処分"だった。

首相は10月6日、党本部に森山、小泉両氏らを招集し、党員資格停止処分を受けた下村博文元政調会長、西村康稔元経済産業相、高木毅元国会対策委員長、党役職停止で政治倫理審査会に出席しなかった萩生田光一元政調会長、平沢勝栄元復興相、三ツ林裕己元内閣府副大臣の6人を非公認と決定した。松野博一前官房長官、武田良太元総務相ら現職32人と支部長2人は公認したが、比例選への重複立候補は認めなかった。

自民党は4月に不記載が確認された議員ら85人のうち39人を処分している。一事不再理の原則に反するとの不満はくすぶっている。

自由民主党本部
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10月9日には旧安倍派6人を非公認に追加し、2人は不出馬に追い込まれた。当選の見込みが薄い候補を切り捨てたらしい。その結果、非公認で無所属出馬は10人、小選挙区で公認、比例重複なしが34人、衆院解散前に離党し、無所属で出馬が2人となった。

こうした対応は、メディアの格好の餌食となった。非公認候補が出馬する選挙区ルポなどで、謝罪する姿が報じられ、有権者の怒りを改めて思い起こした。これは10月の時事通信世論調査(11~14日)に反映する。石破内閣発足後初の支持率が28%を記録し、いきなり「危険水域」に入ったのである。

非公認候補の支部にも2000万円支給

下降傾向は止まらない。読売新聞の10月17日の序盤情勢(15、16日)は「自公過半数見通し」という見出しだったが、25日の終盤情勢(22~24日)は「自公過半数の攻防」に押し込まれた。自公両党で過半数の233議席を割る可能性があることが明らかになっていた。公明党が自民党の不記載議員ら18人を推薦したのも、有権者に理解されなかっただろう。

そこに追い撃ちを掛けたのは、10月23日に共産党機関紙「しんぶん赤旗」が報じた、自民党が公示直後に非公認を含む衆院選候補者の党支部に2000万円を支給した問題だった。

公認候補の支部に公認料500万円プラス活動費1500万円が支給されたのに対し、非公認候補の支部には2000万円の活動費が支給されていた。野党側が「裏公認料」と批判したのに対し、石破首相は「非公認の候補に出しているのではなく、選挙に使うことは全くない」と説明したが、大逆風が一気に加速した。

非公認候補の党支部に活動費として1500万円を支給していれば、問題になることはなかっただろう。森山氏らの手痛いミスだった。

非公認の1人、萩生田氏は「なぜ選挙期間中に支給を決定したのか、有難迷惑な話だ」とX(旧ツイッター)に投稿し、党本部に返還する騒ぎにもなった。内輪揉めが露呈するのは、負け戦に直結する。