「政策ごとに良いものは協力する」

立憲民主党は、安全保障やエネルギー政策などで現実路線を取る野田佳彦新代表(元首相)が、穏健保守層を取り込んで、104の小選挙区選で勝利し、目標だった自公過半数割れを果たした。27日夜のフジテレビ番組では「首相指名を戦うべき環境になるなら、取りに行くのは当然だ」と述べ、国民民主党などとの連携による政権奪取に意欲も示した。

だが、今回の比例選得票は1156万票で、惨敗した2021年衆院選からの上積みは7万票にとどまった。政権批判票の受け皿を国民民主党に譲ったといえる。来年7月の参院選に向け、野党共闘の進め方にも課題を残している。

【図表】衆院選比例代表の各党得票数
総務省自治行政局選挙部、衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調(速報)より作成

維新の馬場伸幸代表は27日夜、NHK番組で、自公両党への協力だけでなく、立民党との連携についても否定した。党内には馬場氏の議席減の責任を問う声もあり、党としての対応は暫く決められない状況になっている。

国民民主党の玉木雄一郎代表は、29日の記者会見で、自公連立政権入りも、立民党との連携にも消極的な考えを示したうえで、「政策ごとに良いものは協力し、駄目なものには駄目だと言って行く」と述べ、部分連合の可能性を否定しなかった。国民民主党は31日、自民党との間で、自公国3党による政策協議に入ることに合意した。

横浜駅前で街頭演説をする玉木雄一郎氏
横浜駅前で街頭演説をする玉木雄一郎氏(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

玉木氏は、首相指名選挙では決選投票でも自身の名前を書くことで無効票を投じる考えを示している。その場合は石破首相による少数与党政権が発足する可能性が大きい。

その政権運営においては、立民党などが提出するだろう内閣不信任決議案への対応が最も重要になる。国民民主党が反対すれば、自民党内に一定程度の造反が出ない限り、決議案は成立しなくなる。石破首相としては、国民民主党を引き付けておくためにも、その主張をできるだけ取り入れることが必要になる。

「予算委をひと通りやって信は問いたい」

今回の衆院選で自民党はなぜ大敗したのか。石破首相による異例の衆院解散宣言から始まった、今回の選挙戦をざっと振り返る。

首相は、就任前日の9月30日に衆院選を10月15日公示―27日投開票で実施する、とフライング気味に表明した。この発言は「変節」と受け止められ、選挙戦に後を引く。

石破首相が早期解散に舵を切ったのは、森山裕幹事長、林芳正官房長官らの説得によるものだったが、外交日程が決め手だった。10月9~11日のASEAN関連首脳会議(ラオス)、11月15~16日のAPEC首脳会議(ペルー)、11月18~19日のG20首脳会議(ブラジル)に首相が出席するには、10月27日投票しかなかった。

だが、石破氏は、外交日程を頭に入れていなかったのだろう。8月24日の総裁選出馬表明の際、記者団に解散時期を問われて「予算委員会をひと通りやって、この政権は何を目指そうとしているのかが国民に示せた段階で、可能な限り早く信は問いたい」との意向を示した。9月14日の日本記者クラブの総裁選候補者討論会でも「国際情勢がどうなるかわからないのに『すぐ解散する』という言い方はしない」と早期解散を否定していた。