仕送りなしで食べていけるように
こうしてナカニシさんの仕事ぶりと怪奇菓子のクオリティの高さが知れ渡るようになると、企業から続々と声がかかるようになった。
2018年は、中西怪奇菓子工房にとって飛躍の年だ。1月にゲームメーカー「カプコン」からのオーダーで、『バイオハザード2』の20周年記念ケーキを制作。7月から10月にかけては、東京ジョイポリスとTVアニメ『東京喰種:re』のコラボレーション企画で、施設内のカフェにて目玉のベリージュレを提供。9月から10月にかけてのハロウィン企画では、3年連続となるサンシャイン水族館のほか、ハウステンボスや星野リゾートともコラボした。
「2018年は、ほんとに忙しかったんですよね。ありがたいことに企業とのコラボはギャラがいいので、このあたりから親の仕送りなしで食べていけるようになりました」
翌年も映画や企業とのコラボが続き、個人向けの売り上げも好調で、いよいよ「目玉御殿」が現実味を帯びてきたところで、コロナ禍が始まった。冒頭に記したように、人と集まる機会が減ったことでオンラインショップの売り上げが激減、映画や企業との案件も軒並み中止され、瞬く間に売り上げが半減する。
自販機という救世主
「みんなつらい状況だし、仕方ないか」と考えていたナカニシさんだが、注文が減って暇になり、ある課題に思いを巡らせているうちに、点と点がつながった。
中西怪奇菓子工房は受注生産のため、工房に商品の在庫はない。しかし、テレビなどを見て工房まで訪ねてきて、「売ってほしい」という人が後を絶たず、「受注制作やから、ないんです」と帰ってもらうことが続いた。