“お得”情報を追いかければ追いかけるほど支出が増加
一方、固定費にもムダがありました。生命保険です。
「今年から新NISA制度がスタートして、これも“やらなきゃ損”だと思って、投資のことを勉強しようとネット検索しました。すると、“変額保険がお得”だと知り、月2万円の生命保険を契約してしまったんです。
その後、変額保険は、結局は自分が払った掛金が投資で運用されているということを理解して、“それなら、利益が非課税になるNISAにしていればよかった”と後悔しました」(キヨミさん)
そこで、保険は変額保険を解約して、固定費2万円カット。もともと加入していた生命保険一本に絞ってもらいました。
こうしてみると、武田家は9年前に比べて、家族構成が変わったとはいえ、5万~6万円は支出が膨らんでいたと言えます。家計改善後の収支は7万8000円も改善され、黒字額は8万円を超えました。見方によっては、“お得”と言われるアプリなどを使うようになってから、かえって支出が5万~6万円かさんでしまっていたということになります。
小池百合子都知事はこの12月、昨年度に続いて生活支援のため、QRコード決済で10%還元キャンペーンを行う予定だと発表しました。上手に利用するのは悪くありませんが、くれぐれもキャレッシュ貧乏の沼にハマらないよう注意が必要です。
武田家は今、収支の差額は基本的にiDeCoやNISAなどの非課税投資に充てて、堅実に資産を増やしています。ふたりとも、元来、真面目で堅実な方。ただ、他人目線のお得情報に惑わされて「これ以上支払いツールを増やすと管理不能になる」という線引きができなかった。自分にとって真の「お得」の基準がブレてしまっていたのが、浪費を招いた原因の一つでした。
自分の軸をしっかり持つこと。すなわち、自分が管理できる範囲を自覚し、その中でやりくりすることも、資産を減らさないための防衛術なのです。