ビジネスマンの場合のユーモアとは、佐治の例でわかるように、ひたむきな考え、行動がまわりをふと微笑ませるというのが理想的ではないか。パーティジョークで他人を笑わせようと思うより、自分がこれだと思うことに情熱を傾け、エネルギーを注ぎ込むことだ。そのほうがまわりは好意的に見てくれるに違いない。
日本電産の永守重信もまた傍から見てるとあぜんとするようなこだわりを持ちながら仕事にまい進している。日本経済新聞の記者が永守に「どうしていつも緑色のネクタイをしているのか」と聞いたところ、次のように答えた。
「きょう現在で、1328本の緑のネクタイを持っています。ここまで32年かかりました。2000本が目標で、自宅に1から2000まで番号を振った収納棚をつくってあります」
「私は暦の九星でいうと『二黒土星』にあたり、これは土なんです。土には緑が欠かせないので、緑のネクタイをしています」
「そして、緑には太陽が必要なので、いつも太陽の方角を向いて座ります。今は社長なので、どこに座ってもいいですが、若いサラリーマン時代には、南か東向きにしか座らないので、上司ともめましたよ」
太陽の方角を向いて座るとは、まるで、ひまわりのような経営者である。ユーモアというか、お茶目ではないか。休みは元日の午前中だけ、あとは24時間働いているという永守ならではのエピソードである。
(芳地博之=撮影 PANA=写真)