「特権に慣れると、平等が弾圧に思える」
アメリカのもう1つの特異性は犯罪で起訴され、労働市場での差別に苦しむ人々の比率が大幅に増えたことだ。ヘルスケア、教育、職業免許のいる仕事では、差別はときには政府当局により行われている。第3の特異性は、人口に占める帰還兵の割合が多く、彼らはしばしば身体的、精神的な健康状態が悪い。
こうした要因はすべて、民族マイノリティにも少なくとも同じくらい影響を与えている。ディートン夫妻によると、なぜ教育水準の低い白人が過去20年にわたり最も割を食っているかといえば、アメリカの人種差別が減って、黒人やラティーノたちが急速に社会的に前進したからなのだという。
これは明らかにきわめてプラスの発展だが、たまたまある集団に生まれついたというだけで優位な地位を得るのに慣れてきた人々には、脅威と感じられるかもしれない。特権に慣れると、平等であることが弾圧に思える、という格言もある。
失業手当、フードスタンプで生きていく失業者たち
この問題に拍車をかけるのが、アメリカ政府は職の減少に対し、影響を受けた人々を労働力から除去することで対処することが多いということだ。もっと積極的な労働市場政策をとる国と比べて、アメリカはその度合いがずっと高い。
失業者は失業手当、フードスタンプ、障害手当、早期退職手当とヘルスケアを受けられる。これは転落を受け止めるクッションにはなるが、そうした支援のほとんどは、再訓練を受けない、別の種類の仕事に就かない、経済の強い地域に転居しないことが条件となっているのだ。そこで彼らは、もはや仕事を提供できない地域にとどまる。
アメリカが失業者に与える金額のうち99%は、失業者がゴロゴロし続けるために払われ、彼らが新しい仕事を見つける手助けには1%しか使われないのだ。