日本のIT人材は分断されている

業種別の年収を見ると、情報通信業の給与がかなり高いことから、IT系の資格があれば年収があがりそうなものだが、そうならないのは日本のIT人材が分断されているためだ。

米国では、雇用の流動性が極めて高いためIT人材はプロジェクト単位で働く場所を変えていき、経験を積み重ねて年収を上げていく。また、米国では個々人の年収は職種ごとに違い、同じ会社にしても日本のような年功序列ではない。

日本では、逆に雇用の流動性がまだまだ低いため、プロジェクトが終わったからといってIT人材を解雇することができず、かといって遊ばせておくこともできない。

そのため、情報通信業のSIer(エスアイヤー)と呼ばれるIT専門会社が、プロジェクト単位で人材を確保するための人材プールとしての役割を担っている。

オフィスで仕事をする2人のプログラマー
写真=iStock.com/Chalirmpoj Pimpisarn
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IT資格があっても年収が上がるわけではない

SIerには、NTTデータ、IBM、富士通、野村総合研究所(NRI)といった会社があるが、例えば、NRIの2023年3月期決算短信を見ると、情報処理技術者試験の資格取得者数は、ITストラテジスト413人、システムアーキテクト1006人、プロジェクトマネージャ1043人、ネットワークスペシャリスト1045人、データベーススペシャリスト1043人、情報セキュリティスペシャリスト1172人などとなっており、ITパスポートどころか応用情報技術者ですら集計対象となっていない。

これは、スキルの面でもIT人材が分断されていることを示している。システムを発注するユーザー企業では、ITパスポートを取りましょう、と従業員に促している一方で、システムを作っているエンジニア集団からみれば、より高いスキルが求められ、実際に難易度の非常に高い、いわゆる高度資格と上記資格保有者が非常に多い、ということだ。

そして、そのスキル差、専門性の高さを背景として、NRIの従業員数は7206人で平均年齢は40.2歳、平均勤続年数は14.3年、平均年間給与は1272万円となっている。

経済産業省の資料でも「我が国では、欧米等と比較して、IT人材がIT関連企業に従事する割合が高く、ユーザー企業に従事する割合が低い」「DXを進めているユーザー企業においても、IT人材の給与水準は、全社的な給与水準とほぼ変わらない傾向が見られる」と指摘されている。

つまり、現時点では、一般企業で働いている人がITの資格を取得したとしても、年収が上がったり、ITの専門的な仕事での成果に繋がったりするとは限らない、ということだ。