ひと呼吸おいたら、鞄などで頭を守りながら非常口へと向かう。煙がひどい場合は、ハンカチなどで口や鼻を覆い、深く吸い込まないようにする。これは通常の火災のときと同じだ。

目の前の非常口に人が殺到しているなら、そこにこだわる必要はない。重ねていうが、地下で気をつけなければいけないのはパニックによる圧死。人々が我先へと押し合う状況なら、巻き込まれる前に見切りをつけて、隣の非常口に向かうほうが賢い選択だろう。

地下鉄に乗っているときはどうか。地震で停電が起きると、車内は一時的に真っ暗闇になる。しかし、ここでもパニックは厳禁。車両に非常用バッテリー電源があるため、通常はしばらく待っていれば非常照明が点灯する。また主要駅には非常用発電機があり、車両も動く。慌てて車両の外に出るより、原則的には車掌など係員の指示に従ったほうがいい。

ただし、煙が流れこんでくるなど、何か危険なサインを察知したら、自主的に避難を始めるべきだ。車両ドアは非常コックを操作することで開けられるが、車両は案外高さがあって、暗闇の中に飛び降りると転んで怪我を負いかねない。地下鉄は、先頭車両と最後尾車両にハシゴつきの非常口がある。可能なら、そこまで移動してから車外に出たい。

大切なのは、係員の指示にすべてを委ねるのではなく、自分の命は自分で守るという意識だ。11年5月、北海道のJR石勝線のトンネルで特急列車の脱線火災事故が起きたとき、車掌から避難の指示はなく、乗客たちは自主的に車外に出て難を逃れた。あとから管理者の責任を問うことができたとしても、失われた命は戻らない。最終的な責任は自分にあるという覚悟を持って、危機に対処していただきたい。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=村上 敬)
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