エリートたちは合法的に収奪する

いずれにしても、人文系のイノベーションすら起きなくなった今では、かつての時代なら「革命戦士」になっていたかもしれないかれらも、現代社会ではせいぜい行政をはじめとするさまざまな機関に入り込んで巧妙に自分の取り分を確保することに注力している。その方がコスパがよいからだ。

平和で安全で快適で自由な先進社会においては、頭の悪い人間がたとえば強盗や恐喝などの悪行をすることより、頭の良い人間がその知能により――既存の社会構造に寄生したり、排他的利権構造をつくったり、後進を潰して改革や変化を阻害する方向に行動するような形で――悪さをすることの方が、全体にとっての弊害は大きくなっていく。強盗や恐喝は法で裁くことはできるが、そこそこの秀才たちの「行き詰まった知性」によってなされるさまざまな行為は、それが明確な詐欺や横領などではないかぎりまったく合法であり正当化されるからだ。

人類に漂う「どん詰まり感」

この宇宙で光よりも早く移動することはどうやら無理そうで、しかもその光は星間飛行をするにはあまりにも「遅い」ことがわかってきた。

光速を超える乗り物をつくろうにも、理論的にはその推力を得るためのエネルギーが無限大になってしまうため、人間はどうあがいても光速よりちょっと遅いくらいの乗り物をつくるのがこの宇宙のレギュレーションでは限界になる。私たちはもっとも近所にある恒星に行くのにすら、たとえ光の速さに遜色ない乗り物をつくっても4年以上もかかってしまう。往復するだけで8年が経過する。近場の宇宙よりも先に版図を広げるのは現実性に欠いている。

「この宇宙を支配する物理法則にのっとる形で行えるイノベーションは、あらかたやりつくしたのではないか?(≒そこそこ頭の良い人たちが、昔より増えているわりには、昔ほどその使い道を失ってきているのではないか?)」

私たち人類には、その「どん詰まり感」が漂ってきている。