ふたつの「60年間」の大きな違い

ライト兄弟が空を飛んでからニール・アームストロング(*2)らが月面に降り立つまでの60年と、アームストロングらが月面に降り立ってから現在までの60年では、表記のうえでは同じ60年でもその変化の質的スケールは比較にならない。もちろん後者の60年も人間社会は進歩と発展を遂げてきたことはまぎれもない事実であり、新しい発明やイノベーションが登場しなかったと言っているわけではないことは明確に断っておく。

アポロ10号
アポロ計画で用いられたサターンⅤ型ロケット(写真=NASA/PD NASA/Wikimedia Commons

だが空や宇宙といった未知の領域にまで人類の版図を広げるような、ホモ・サピエンスが数十万年ともに歩んできた既成概念を覆す画期的変革はそれほど起こっていない。人の世にすさまじい変化をもたらした前者の60年間で生み出されたさまざまなイノベーションをブラッシュアップして、それを発展的に改良・改善・改築することには成功したかもしれないが、しかしそれまでだ。

言い換えれば、人間の創造性や知的能力が人間社会にとってそれほど大きなインパクトを持たなくなってきているということでもある。