中・長期的な効果については疑問符が付く

足許、中国では不動産市況の悪化、過剰生産能力の増加など複合的な要因が重なり、工業利益は減少している。9月は、中国の生産者、消費者物価指数ともに前月から下落した。企業部門の過剰生産能力は深刻だ。モノやサービスの値段は下落すると予想され、消費を先送りする消費者も増加傾向にありデフレ懸念は高まっている。

デフレ経済の深刻化は、企業収益の減少につながり、雇用不安も上昇するだろう。そうした負の連鎖(デフレ・スパイラル)阻止のため、中国は中央・地方の債券発行を増やし追加の経済対策を打ち出さざるを得ない状況に陥っている。

経済政策に必要な資金の調達のため、中央政府は30年債などの超長期国債の発行を増やそうとしている。地方政府も地方債の発行に加え、これまで抑えてきた地方融資平台の資金調達を増やすことになるとみられる。政府の支出増加は一時的に、経済成長を下支えする要素になるだろうが、中・長期的な効果については疑問符が付く。

中国・深センの全景
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このままでは国有企業の収益性も黄色信号

問題は、現在の政策運営方針が続いた場合、中国経済の成長率が上向くかだ。現時点で、先行きは楽観できない。

これまでのところ、中国政府は新しい需要創出に関する具体策を示していない。10日、政府は、民間企業の国家事業参入促進に関する法案を示した。この法案は、これまでの国有・国営企業の優遇=“国進民退”の延長線上の政策とみられる。

個人、民間企業の活力を生かした新しい産業育成策などが進まないと、経済運営の効率性は高まりづらい。不良債権問題に関しても、中国政府は大手デベロッパーの債務処理を本格的に進める姿勢を示していない。

中国がそうした問題を抱えたまま、金融と財政政策を緩和して資金を経済・金融市場に供給しても、銀行は相対的に信用力の高い政府系企業などに優先して融資を行うことになるはずだ。それは過剰生産能力の累増につながる。国有企業でさえ収益性は低下し、景況感は軟化するだろう。