問題解決につながらない政府プラン

報告書で提案された方策は主に2つ。

①内親王・女王がご結婚後も皇族の身分を保持される一方で、その配偶者やお子さまは国民と位置づける。

②一般国民の中から、いわゆる旧宮家系子孫の男性だけに限定して、他の国民には禁止されている皇族との養子縁組を例外的・特権的に認めて、皇族の身分を与える。

しかし今の日本では、側室制度がとっくに過去のものになった一夫一婦制の下で、少子化が進んでいる。そうした条件下で、皇位継承資格を「男系男子」に限定するという明治の皇室典範で初めて採用され、側室制度とセットでしか機能しない時代錯誤でミスマッチなルールをそのまま維持していては、当たり前ながら「安定的な皇位継承」は決して望めない。

①②のような目先をごまかすだけのプランでは、何ら根本的な解決につながらない。

旧宮家養子縁組プランは憲法違反

それどころか、①は皇族と国民が1つの家庭を営むという、「家族の一体性」をかえりみない方策だ。近代以降、前代未聞の家庭を女性皇族に強制する言語道断なプランというほかない。

②はそもそも結婚という心情的・生命的な結合もないのに、自ら進んで国民としての自由や権利を放棄して皇族になろうとする当事者が現れるのか、どうか。

それ以前に、一般国民の中から特定の家柄・血筋=門地の者だけが、他の国民に“禁止されている”手段によって皇族になるという制度に対しては、かねて「門地による差別」を禁止している憲法(第14条第1項)に違反する疑いが指摘されている。これに対して、内閣法制局もいまだに説得力のある釈明ができないままだ。

違憲の疑いが晴れず、「国民平等」の原則を損なうプランは、とても許容できないはずだ。

しかも親の代から国民で、すでに“国民の血筋”になった者が結婚も介さないで皇族になり、万が一その子孫から天皇に即位する事態になれば、これまでの皇室の血筋はそこで途絶える。国民出身(!)の新しい王朝に取って代わられる結果になる。

そもそも、皇族でない者を養子縁組によって皇族にするような事例は、長い皇室の歴史の中で、まったくなかった。

このような無理で無茶なプランを基にいくら協議を重ねても、野党に健全な感覚が残っていれば、合意できるはずがない。

キーパーソンは石破首相と野田立民党代表

9月27日の自民党総裁選挙を経て石破茂衆院議員が新たに首相になった。それに先立ち、野党第1党の立憲民主党でも代表選挙があり、野田佳彦衆院議員が代表に選ばれた(9月23日)。

先の特例法制定のプロセスを振り返ると、皇位継承問題がひとまず決着する場合、さしあたりこの2人がキーパーソンになる可能性が高い。