色鮮やかに飾られる真田家の居城
第7位には丸岡城(福井県坂井市)を挙げたい。天正4年(1576)に柴田勝家の甥の勝豊が築いたとされるこの城には、天守が現存し、重要文化財に指定されている。外観が古式であるため、一時は日本最古の天守と考えられていたが、その後、寛永年間(1624~44)に建てられたものだとわかった。とはいえ、小さな二重天守は古武士のような佇まいで味わい深く、屋根には珍しい石瓦が葺かれている。
城山の麓の堀跡にもうけられた霞ヶ城公園から山上の天守を眺めると、紅葉に囲まれて美しさが格別だ。もちろん、本丸にも多くのモミジがあり、古式の天守とモミジの組み合わせを間近から眺めるのも趣深い。
第6位には上田城(長野県上田市)を選んだ。天正11年(1583)に真田昌之が築いた城で、その2年後、徳川家康の軍勢を寄せつけず、慶長5年(1600)には徳川秀忠が率いる軍勢に足止めを食らわせ、関ヶ原合戦に遅参させたことでも知られる。
もっとも、真田氏の城のイメージが強い上田城だが、いまに残されているのは、元和8年(1622)に小諸(長野県小諸市)から移封になった仙谷忠政が再建したものだ。現在、本丸には3棟の二重櫓が建つ。西櫓は仙谷氏の時代から現在の位置に建っているが、南櫓と北櫓は明治初期に払い下げられ、遊郭に移築されたのち、紆余曲折を経ていまの位置に再建された。また、その2棟のあいだには、東虎口櫓門が伝統工法で再建されている。
その本丸跡では多くのモミジが紅葉する。また、二の丸堀の跡であるけやき並木散歩道は、黄色いケヤキと深紅のモミジが入り混じって美しい。場所を選ばずとも、城跡全体が鮮やかに彩られる。
城だけでなく庭園も必見
第5位は和歌山城(和歌山県和歌山市)。豊臣秀吉の弟の秀長が築き、浅野幸長が大改築し、さらに徳川家康の十男、頼宣が元和5年(1619)に入封し、御三家の城にふさわしく整えた。三重三階の天守を核とした連立式天守が残っていたが、惜しくも昭和20年(1945)の空襲で焼失。同33年(1968)に外観復元されている。
和歌山城で紅葉がとりわけ美しいのは、江戸初期に自然の起伏をたくみに利用して造成された池泉回遊式の庭園、西の丸庭園である。国の名勝であるこの庭には「紅葉渓庭園」という別名があり、約60本のイロハモミジやイチョウなどが鮮やかに色づく。それらが池に映り込んだ美しさはたとえようもない。庭園から紅葉越しに見上げる天守も格別だ。