日本人に「不足しがちな栄養素」を補うには…

◎緑の濃い野菜

ほうれん草、小松菜、春菊、ケールなどの青菜や、ブロッコリー、ゴーヤなど緑の濃い野菜は、日本人に不足しがちなマグネシウムを多く含んでいます。マグネシウムは、骨や筋肉などの細胞内に多く存在しており、エネルギーをつくり出すためになくてはならない栄養素です。血管や筋肉をやわらかく保つのにもマグネシウムが関わっています。不足すればマグネシウムと拮抗するカルシウムの濃度が上昇し、代謝がうまくいかなくなります。

その結果、体のあちこちで筋肉が収縮して痙攣が起こりやすくなります。足の筋肉で起これば「足がつる」ことが多くなりますし、血管が収縮すれば血圧が影響を受け、やがては糖尿病、心臓病などの病気につながります。腸の動きも腸管壁の筋肉によっておこなわれているため、収縮状態が続けば消化管の動きが低下し、便秘の原因になります。

このようにマグネシウムは全身に関わる重要な栄養素でありながら、ストレスがかかると尿からどんどん排出されてしまいます。加齢や薬の影響などによって体内のマグネシウム量が減ってしまうこともあります。そもそも供給源となる野菜に含まれるマグネシウム量は減っているのに、ストレスの多い現代社会では、多くの人がマグネシウム不足を招きやすいという構図になっているのです。さらに、骨を強くしようとカルシウムばかりを補充すれば、よりアンバランスを招く結果になります。意識して緑の濃い野菜を積極的に食べることをおすすめします。

「自然薯を食べると元気になる」の科学的根拠

◎粘り気のある芋類

自然薯、長芋、里芋、大和芋、菊芋など粘り気のある芋類には、男性ホルモン・女性ホルモンの原料となるディオスゲニンが多く含まれています。

1930年代に自然薯の研究をしていた米国人研究者が、自然薯に体内のDHEAを増やすディオスゲニンという成分があることを発見し、以来、「自然薯を食べると元気になる」と言われるようになりました。自然薯は「山薬」という名称で滋養強壮作用のある漢方薬(八味地黄丸や六味丸など)にも含まれています。その後、自然薯と同じ系統の植物にも似た作用をもつ物質が多く含まれることがわかりました。

自然薯。「若返りホルモン」として知られるDHEAを増やす成分が豊富に含まれる
自然薯。「若返りホルモン」として知られるDHEAを増やす成分が豊富に含まれる(写真=7'o'7/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

DHEAはコレステロールを原料に副腎でつくられ、免疫力を高める、発がんを抑制するなどの働きがあります。このDHEAをもとに、男性の場合は精巣で、女性は副腎、脂肪組織、卵巣で男性ホルモン(テストステロン)がつくられています。テストステロンは女性にとっても重要で、性機能だけでなく、筋肉をつくる、決断力や意欲を増強させる、記憶力を維持するなど、「活動する力」を生み出す源となります。女性ホルモンもテストステロンを変換させてつくられます。

多くのホルモンは、加齢とともに減少する傾向にありますが、DHEAも男女ともに20代が分泌のピークで、加齢に伴って減っていきます。逆に、健康長寿の人はDHEAの値が高いこともわかっています。DHEAが「若返りホルモン」と言われる所以です。

ヤムイモ、京芋、タロ芋なども見つけたら入手して料理に使ってみましょう。良質なたんぱく質、亜鉛もDHEAの生成を助けます。