昔のように安く新築マンションを作ることはできない

「返済額が年収の30%」を基準に計算してみると4500万円のローンを余裕をもって組めるのはフラット35が2%の時代であれば夫婦合計で年収600万円以上の世帯なのですが、住宅ローン金利が3%に上がれば年収700万円、ローン金利が4%なら800万円が世帯年収の下限になります。

モデルケースの借り入れでは、金利が1%上がるごとに住宅ローンを組める年収が100万円上がってしまう。ないしは夫婦の合計年収が600万円の世帯では余裕をもって組めるローンが1%の金利上昇で4500万円から3900万円へと減ってしまいます。

だとしたら、住宅の未来は結局どういうことになるのでしょうか?

最近の住宅価格の高騰は東京の都心部に関しては富裕層向け需要が原因ですが、それ以外の首都圏全般では原材料費や人件費高騰が主因です。首都圏以外でもこの事情は同じです。ですから住宅ローン金利が上昇して、ローンを組める需要が減った場合、起きることは新築物件の下落ではなく、新築物件自体の新規販売戸数が減少することになるでしょう。マンションを昔のように安くは新築できないのです。

「金利が上がる前に住宅ローンを固定金利で組む」という選択肢

とはいえ、少子高齢化が進むことで今後は中古物件が豊富に市場に出回るでしょうから、庶民が住宅が買えなくなるという事態までは想定する必要はないと私は思います。住宅ローンでマイホームというのは、今後も日本人の基本的なライフスタイルであり続けるでしょう。

明るいリビングルーム
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

これまで日本は長期にわたってゼロ金利ないしはマイナス金利でしたから住宅ローンも借りやすい時代が続いていました。これから訪れるであろう「金利がある世界」では、それに応じて経済も発展して実質賃金が上昇することも期待したいところです。ただし1%の金利上昇に対して年収が600万円から700万円へと17%上がらなければ同じローンが組めないというのは高いハードルでしょう。

結論としては金利上昇で、これまでのような広さや立地のマイホームは手に入らなくなるというのがこれからの未来に起きることです。

その未来を避ける唯一の方法は、金利が上がる前に住宅ローンを固定金利で組むことかもしれません。政策金利を日銀や政府が上げにくくなったこの先一年間の猶予は、若い世代の方の人生にとって重要な決断のタイミングなのかもしれないのです。

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