この先の住宅価格は「今の水準と同じ」か「それ以上」

そしてもうひとつ大きな問題が、果たして4500万円程度のローンで今後も住宅が買える状況が続くのかという話です。そこで未来の住宅価格がどうなるのかを考えましょう。

この先の住宅価格については予測に諸説があります。金利が上がると需要が減るから住宅価格が下がるという楽観論もあるのですが、状況はそれほど簡単ではありません。なにしろ最近は資材費の値上げに加えて、建設に関わる人件費が高騰しています。

この建設に関わる原価上昇のトレンドは変わらないと予想されるため、この先の住宅価格は、中央値あたりの普通の物件でも今の水準と同じかそれよりも上に高止まりすることを前提に考えたほうがいいのではないかと私は予測しています。

2024年上期の首都圏の新築分譲マンションの平均価格(さきほどの中央値ではなく平均の価格)は7677万円です。この平均値は都心部の超高額物件にひっぱられた数字です。たとえば東京23区の平均は1億円を超えていて、中でも最高額の千代田区の平均は2億7000万円近くになるのですが、逆に最低額の墨田区の平均が4000万円強だったという具合です。

結局のところ「金利」が重要になる

そもそも東京中心部の千代田区、中央区、港区、渋谷区といったエリアはもはや富裕層ないしは外国人向けの新規物件しか販売されないようになるでしょう。そのような需要がある以上、デベロッパーは高級物件を開発するのが経済合理性として正解だからです。

一方で東京の中心部やタワーマンションを一旦あきらめて、首都圏全体で考えれば、住宅価格はコストと需要に見合った水準に落ち着いています。さきほど首都圏の新築マンション価格の中央値が6000万円強だと申し上げたように、新築マンションや戸建て住宅で5500万~6500万円ぐらいの物件は今後も売れ筋の中心になるはずです。

ただしここにもうひとつ落とし穴があります。結局のところやはり金利が重要だということです。

住宅ローンを組むにあたって、適正な収入水準の目安があります。これまではよく「年収の7.5倍」という目安が使われていました。実はここに落とし穴があります。これまでの目安は金利が変わらない世界を想定していたのですが、金利が上がる世界ではこの常識が変わります。

具体的には、金利がある世界ではもうひとつのよく使われる目安である「返済額が年収の30%」という上限の目安の方が意味を持つようになります。ちなみにこれらの目安では収入は手取りではなく総支給額で計算します。

家のカギと電卓
写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk
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