低い日本の肥満・栄養リスク、高い米国の肥満・高血糖・薬物リスク

中国やインドなどの途上国を含む世界と比べたこうした日本の特徴は、欧米先進国と共通する特徴である側面が大きいが、日本ならでは特徴もある。

この点を確認するとともに米国の特殊な状況を見るため、図表3には、日本、米国、米国以外のG7諸国の要因別の死亡リスクを比較した。先進国の中でも米国は特殊なので、グラフでは、米国と米国以外のG7諸国を別個に示した。

【図表】高血糖、肥満、薬物のリスクの高い米国
筆者作成

米国以外のG7諸国と日本はかなりリスク要因別の死亡リスクの高低が類似している。ただし、「肥満」と「アルコール」「野菜食不足」については日本の死亡リスクのほうが格別に低くなっている。食生活と関連するリスクの小ささは日本ならではの特徴と言えよう(ただし、「塩分過多」は先進国と比較してもややリスクが大きくなっている)。

米国のリスク要因はかなり特異であることが図からうかがわれる。「高血糖」「肥満」でのリスクの高さや「薬物乱用」のリスクの高さが先進国一般と比較して非常に大きい点が目立っているのである。その一方で、大陸国であり、都市配置が分散型であるせいか「大気汚染」や「粒子状物質(PM)汚染」のリスクは小さい。

このデータによれば米国では毎年、死亡者数の3.2%に当たる11万人が「薬物乱用」で亡くなっている(日本は0.5%、米国以外のG7諸国は0.7%)。

このように、日本は「塩分摂取」など一部を除いて、食生活関連リスク(肥満リスクを含め)や環境面を含むその他のリスクを注意深く回避しているため、世界一の平均寿命を維持し続けている一方、米国は、食生活、アルコール、薬物などでリスクを回避できず、あるいはリスク回避より経済を優先しているため、平均寿命最下位の地位に甘んじざるを得ない状況になっているのである。言い換えれば、日本人のモットーは「細く長く生きる」であり、米国人のモットーは「太く短く生きる」であると捉えられよう。