「コールセンターのアルバイト」で日本語を磨く

そう語るのは、早稲田大学法学研究科・民事法学専攻博士課程に在籍している魯潔さん。

上海出身の魯さんも、大学の最寄り駅である東西線・早稲田駅徒歩1分の場所に両親に購入してもらったワンルームを所有。今は同じ境遇の同胞に貸し出している。

魯さんの父親は、中国の国営企業に勤めるサラリーマン。中国国内では中流階級の家柄で生活に困った経験はない。

来日当初、受験のために日本語の「読み・書き」は猛勉強したものの、大学の授業の3割は聞き取れず、コミュニケーションもままならなかった。

生活費を稼ぐためにアルバイトを始めるも、業種は居酒屋やコンビニばかり。日本語能力を飛躍的に上達させようと魯さんが飛び込んだのは、高度なコミュニケーション能力が求められるクレジット会社のコールセンター。

「日本人の上司が守ってくれました」
写真=iStock.com/PeopleImages
「日本人の上司が守ってくれました」(※写真はイメージです)

督促状を出したにもかかわらず、逆上して電話をかけてくるクレーマーなど、一癖も二癖もある顧客に無我夢中で対応した。

「日本語を磨くために電話が鳴ると積極的にとりました。日本人じゃないと分かると、怒って責任者を出せと、すごむクレーマーがいたのですが、私を採用してくれた日本人の上司が、彼女は他の日本人の社員と全く同じ採用です、と言って守ってくれました」

「高度外国人材」は引く手あまた

こうした努力が実り、来日から4年目には読み書きだけでなく会話も不自由しなくなった。

大学卒業後は、大学院に進学。今では難解な法律の専門用語や言い回しも日本語で楽々とこなす。

魯さんは日本語を母国語としない人の日本語能力を検定する「日本語能力試験」で、完全に日本語をマスターした証である「N1」ランクを有する。魯さんのような高度な知識と技能を持ちあわせている人材は「高度外国人材」と呼ばれ、外資系コンサル・投資銀行、国内総合商社、国内自動車メーカーなどから引く手あまただ。

職歴を磨けば、日本の永住許可に要する在留期間が、最大で1年に短縮されるなどの優遇措置を受けることができる。