「中国への期待」が長続きするかは疑問

24日の一連の経済対策の発表後、中国の本土株は反発した。外国為替市場では、ドルの軟調さに支えられた側面もあるが、人民元は上昇した。中国と経済的な関係性の高いアジアや南米などの新興国の通貨も底堅さを保った。主要投資家にとって、中国人民銀行が主に進めた緩和措置は期待以上の規模だったといえる。

しかし、そうした反応が長続きするかについては疑問符が付く。今回の対策の中で、中国政府は不良債権処理を進める方針を示さなかった。中国経済の成長率鈍化の根本的な要因は、不動産、地方政府(特に、隠れ債務である地方融資平台)の不良債権増加にある。両者は土地の使用権譲渡益を通して相互に依存している。

本来なら、不動産・地方政府両セクターの債務問題の同時解決に向けた抜本策が必要だが、実際はその難易度は高い。地方政府の財政問題は、戸籍制度に紐づいた年金、医療など社会保障制度の悪化にもつながるだろう。現実的な策として、まず、不動産分野の不良債権処理を迅速に進める。その上で中央政府は財政支出を進めて景気を支えつつ、地方政府などの構造改革を慎重に進めることが必要だ。

中国で「失われた30年」が起きる可能性も

わが国の教訓として、不良債権処理が進まないまま金融を緩和しても、政策の効果は長続きしない。市場参加者は、追加の金融緩和を期待し金利低下に拍車がかかる。いずれ、金融緩和の余地はなくなり、銀行の収益性も低下する。中小の銀行の経営体力は低下し、金融システム不安が発生する恐れも高まる。貸し渋りや貸しはがしも増え、デフレ環境は長期化する。

中国経済が、そうした状況に向かう懸念はむしろ高まっている。デフレ圧力が高まると経済成長率は低下し、中国は財政支出を増やすことが必要になる。税収の減少などで財政赤字と公的債務残高の拡大懸念は高まるだろう。

それに伴い、中国国債の格下げリスクは高まり、海外の投資家が国債など中国関連の資産を保有し続けることは難しくなる。“中国売り”に動くファンドなどは増えるだろう。今回の経済対策での本土株などの反発は、一時的なものにとどまる可能性は低くはないだろう。中国経済の下げ止まりを論じるのはやや早計だ。

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