EV、PHVの相次ぐ値下げも販売台数は減少傾向

今回の中国政府の景気対策の背景には、景気後退リスクの上昇懸念が深刻化していることがある。8月の主要な経済指標を見ると、不動産バブル崩壊により中国経済の停滞感は一段と高まっている。生産者物価指数は予想以上に下落した。家電など耐久財の需要は減少し、川下(最終消費者)のデフレ圧力も高まった。

消費意欲の減退は、8月の輸入が前年同月比0.5%増となったことからもわかる。相次ぐ値下げで電気自動車(EV)やPHVの販売は増えたが、新車販売台数は前年同月の実績を下回った。政府は旧型車からEVなどへの買い替え補助策(以旧換新)を実施し、購入補助金を積み増した。それにもかかわらず、需要は期待されたほど増えない。自動車市場の競争激化=レッドオーシャン化は深刻だ。住宅価格の下落にも歯止めがかかっていない。

2024年春の全国人民代表大会(全人代)で、中国政府は経済成長率目標を5%前後に設定した。8月のデータを見る限り、5%成長の実現は難しくなりつつある。中国経済の見通しを下方修正する欧米の金融機関も増えた。先行き不安の高まりで、年初から9月半ばまで本土株の下落も鮮明だった。

電気自動車バッテリー
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日本の“ゼロ金利政策”を参考にしたようだが…

中国政府は金融政策を緩和し、不動産バブル崩壊の負の影響の払拭を図っている。中国政府は、金利を引き下げて資金供給を増やせば住宅価格や企業業績は上向き、労働市場の悪化を食い止めることが可能と期待しているのかもしれない。

主に金融緩和を進め景気浮揚を図る経済政策は、1990年代のわが国でも実施された。1999年、日本銀行は“ゼロ金利政策”を導入した。企業や家計の借り入れを支援して、需要を喚起しようとした。2001年から日本銀行は“量的緩和政策”を開始し、デフレ経済からの脱却に取り組んだ。それを参考に、中国は金融緩和で内需を下支えしようとの意図があるのかもしれない。しかし、金融政策だけで大規模なバブルの後始末は難しい。

一方、24日の発表では、成長分野での企業増加に関する構造改革などの施策は見当たらなかった。“国進民退”を進め輸出競争力を高めて外需を取り込み、景気の持ち直しを目指す。そうした中国政府の政策方針に、大きな修正はないとみられる。