成功者ほど「自分なんてダメ」と思いこんでしまう

Aさんにも多くの思考の癖がありました。「自分なんてダメだ」という発言が多いのは(6)の「拡大解釈と過小評価」、休日に料理できないことがあるから私はダメな妻だ。夫が子どもの写真を見ていたから、本当は仕事をやめてほしいのだろう、などは(5)「結論の飛躍」、1つの行動を大げさに解釈して全体に当てはめてしまっていることから(2)「一般化のしすぎ」に当たります。

こうした思考の癖があり、さらに先述した、ぐるぐる思考で考え続けてしまうと、常に不安で心が休まる時がなくて当然でしょう。

不安を抱えるクライアントさんにこの10パターンの思考の癖を見ていただくと、いくつも当てはまる人が多いです。特に多いのが(1)全か無か思考と、(8)すべき思考で、すべて当てはまるケースもあります。

実際、キャリアで成功をおさめたクライアントさんを見ていると、思考の癖にとらわれて気楽に考えることができない人がとても多いです。

「過保護な親」が子どもから奪ってしまうもの

Aさんがおっしゃったことで印象的だったのは「ずっと成長し続けなければいけない。がんばっていなければ意味がない」という言葉でした。思考の癖の(8)すべき思考です。でも、人間なのだから、上昇する時があれば、下降する時があって当たり前。常に上昇すべきという考えでいたら、疲弊するのは当然です。

こうした思考を持つ原因はさまざまですが、やはり親からの影響は大きいと感じます。否定的、批判的な親、厳しい親の影響はもちろんですが、過保護な親のもとで育ったことが影響するケースもあります。これは子どもが失敗しないように何でも親が先回りして解決しようとするため、子どもは自分で問題を解決する機会を奪われてしまい、自己効力感が育ちにくくなるためです。

息子を叱る親
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そして、自分には問題を解決する能力や物事を成し遂げる力がないと思いこみ、うまくいかない時に何でも自分のせいにしてしまう(10)「個人化」が生じやすくなります。また、未来に対する不安を感じやすくなるため、それが高まると物事を最悪のシナリオで捉えてしまう(5)「結論の飛躍」にもつながりやすくなります。

また、親の思考の癖が強いと、当然、子どもの物事の捉え方や考え方にも影響します。