日本に住むなら「持ち家」にすべき

「持ち家か? 賃貸か?」

このテーマは、さまざまな専門家がそれぞれの立場から主張し、決着がついていない議論です。ただ、これまで出てきた主張の中で、決定的に見落とされている視点があります。

結論としては、日本に住むなら持ち家を選ぶべきです。そして、見落とされている重要な視点とは、「日本の住宅性能は、諸外国に比べて圧倒的に低く、そのデメリットはとても大きい」ということです。

江東区の街並み
写真=iStock.com/voyata
※写真はイメージです

特に賃貸住宅は、十分な性能の住宅の供給がほとんどありません。そのため、日本の賃貸住宅では、諸外国の基準に照らしてまともな性能の家で暮らすことは、ごく一部の例外を除いて、残念ながらほぼ不可能であるということなのです。

筆者は、高性能な住まいづくりをサポートする会社を経営しています。最近は高気密・高断熱賃貸住宅のプロジェクトをサポートする機会も増えています。

本稿では、その専門家の立場から、高性能な住宅に暮らすメリットと高性能賃貸住宅がなぜ供給されていないのかについて説明したいと思います。

日本の住宅性能は中国、韓国よりも劣っている

日本の住宅の性能が、諸外国に比べて圧倒的に低性能であるというのは、専門家の間では常識です。知らない方も、ネットで少し調べれば、それが真実であることはすぐにわかると思います。

ところが、筆者の肌感覚では、ほとんどの方々は、日本の住宅の性能は、他国に比較して優れていると思っているようです。

「住宅の性能」とは、さまざまな要素から構成されますが、日本の住宅は、特に「断熱性能」と「気密性能」が非常に劣っています。これらの性能は、欧米はおろか、いまや中国・韓国よりも低いレベルです。

日本の住宅の性能が、中国・韓国よりも劣ると言われると、まさかと思う方も多いのではないでしょうか。ですが、これは事実なのです。

図表1は国土交通省のホームページに掲載されている住宅の外皮平均熱貫流率(UA値)基準の国際比較です。縦軸のUA値というのは、住宅ごとに計算で求められる断熱性能を示す値です。この値が小さいほど、高断熱であることを意味します。

横軸の暖房デグリーデーは、地域の寒さを表す指標です。暖房に必要な熱量で、冬の寒さがだいたい同じ気候の地域ごとに括っているもので、同じくらいの寒さの地域で住宅に要求されている断熱性能(UA値)を比較したものです。

つまり、おおむね同じくらいの寒さのエリアにおける断熱性能の基準の国際比較です。