トヨタにとってここが正念場

〈調整文化〉が強い組織では、語られた内容の価値を判断するのでなく、「誰が語ったか」に注目してしまう。「豊田会長が言ったことだから」と会長判断が絶対視されだしたら〈調整文化〉そのものだ。ご本人が望まなくても、忖度系の人たちは「何を語ったか」ではなく、「誰が語ったか」を基準に判断するものだ。この悪弊は組織全体に広がり、現場でも「誰が言ったか」を基準に意見が通ったり潰されたりするようになる。まともな対話ができなくなり、ロジカルな思考が失われていく。

絶対的な権力をもつトップは、組織の客観的な判断基準を言語化すべきだろう。「この判断基準で意思決定するのが正しい」というルールを明文化する。メンバー全員に共通の規範やルールを設けたあとは、たとえトップでも規範から外れた振る舞いは許されない。「誰が言ったか」でなく、内容で判断する価値観を浸透させるうえで必要なことだ。

専制君主が統治する組織と、みんなでルールを共有する民主的な組織では、働く人の意識とパフォーマンスが大きく違う。明文化された判断基準が社内の共通認識になれば、優秀な人材が辞めていくことは減るはずだ。豊田会長が思い描く10年先、20年先のトヨタを考えれば、ここが正念場だと私は見ている。

青空とトヨタのロゴ
写真=iStock.com/ollo
※写真はイメージです
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