5年に一度、国が実施する「年金財政検証」。年金制度の未来予測を行い、健全性の維持を確認したり、法律改正に役立つ試算を追加で行ったりします。
7月に公表された最新の検証結果をざっくりおさらいすると、年金の運用は好調に推移し、女性と高齢者の働く人たちは想定以上の大幅増(保険料負担者の増)となり、年金財政にポジティブに作用しています。少子化の進展が気になるものの、寿命の延びも落ち着いていて、これらが年金財政的を大きくマイナスにすることはありませんでした。
この年金財政検証で毎回、鍵となる言葉があります。それは後で詳述する「所得代替率」です。今回、この数字の低下が抑えられました。前回の検証では61.7%から51.9~50.8%への低下(ケースI~III)でしたが、今回は61.2%から56.9%への低下にとどまった。つまり低下幅が縮小したことになります。
相当悪い経済見通し(過去30年と同等の経済変化しか未来にも起きない)を織り込んだ場合であっても、前回が46.5~44.5%まで下がるとしたところを今回は50.4%までの低下に抑えており、低下がかなり食い止められています。
所得代替率は、制度の話として有意義だが…
さて、この「所得代替率」とは何か。少しわかりづらい概念ですが、公的年金の給付水準を表すものさしで、シンプルにいえば「現役世代と年金世代とで給与と年金の比率がどれくらい変わるか」。年金を65歳でもらい始めたときの額が、そのときの現役世代男性の平均手取り収入の何%にあたるかを示す指標です。
検証時は、「現役世代」については男性の平均手取り賃金額を、また「年金世代」については男性が会社員+女性が専業主婦というケースのモデル年金額を抽出して、両者を比較しています。
この場合の女性は、「一度も仕事せずに40年専業主婦」という設定になっており、共働きの増えた現代ではマッチしていません。女性も働いている分を加味したらもらえる年金はどうなるか、また未婚者の場合、ひとりぶんの年金だとどうなるかも気になるところですが、そこが現状フォローされていないのは違和感を覚えるところです。