「高齢者に炭水化物は毒」という、真っ赤なウソ

年をとったら、BMI25以上の人は食事量を減らすべきだ、ということはよくわかった。でも、あらゆる食事の量を減らせばいいということなのでしょうか?

たとえば肉や糖質は減らして、もともと摂取量の少ない野菜などは減らさないほうがいいのでは?

多くの研究が行なわれた結果、現在はそれぞれの研究者によって、減らすように推奨する栄養素が大きく異なった状態になっています。一番意見が分かれるのは、糖質、すなわち炭水化物をどの程度減らすべきか、でしょう。

肥満や糖尿病の原因になるからという理由で、健康診断の問診の際に医師から、米やパン、麺類、甘いものなどの炭水化物の摂取量を減らすよう、指導された方も多いのではないでしょうか。

炭水化物制限の概念
写真=iStock.com/yuruphoto
※写真はイメージです

確かに現在でも、「炭水化物を減らせ」「糖質制限をしなさい」と主張する医師や研究者は少なからず存在します。

しかし、地中海沿岸諸国の人々や、日本の長生きで知られる地域の人たちの実際を見れば、パン、そば、うどんなどを毎日のように食べており、「炭水化物を多く摂取しても問題ない」ということにもなるでしょう。

ご飯を食べないことで、意識がボーッとしたら大損

先に紹介した日本老年医学会の「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」は、「高齢者における糖質摂取制限の安全性は確認されていないことから、極端な糖質制限はのぞましくない」としています。ですから日々の食事の、50%から60%は糖質を食べても構わないとしているわけです。

私自身にしても、パンかそば、パスタ、米などの炭水化物(糖質)は、毎食必ず摂取しています。量はあまり多くならないように心がけていますが、炭水化物を目の敵にする意見には賛成できません。

脳はブドウ糖をエネルギー源としていますから、これが不足すると、注意力が散漫になり、疲労感が出て判断力がなくなります。ひどいときは、意識障害を起こすこともあります。

ご飯を食べないことで、意識がボーッとしてしまえば、変な詐欺にうっかり引っかかったり、よろけて骨折したり……などというリスクも出てきます。

健康のために控えたことで、かえって健康を損なうなんてことのないように、ほどほどに減らすことを心がけましょう。