中途採用求人数が激減している。景気低迷の中、新天地で成功を勝ち取る人に共通する条件は何か。4人の識者が、20冊の本をもとに解明する。
「転職市場も激変しています。どの業種も軒並み求人数が3~4割減。厳しいですね」
人材紹介大手・インテリジェンス社長 高橋広敏さんは語る。
この状況を踏まえて、彼が真っ先に挙げたのが松下幸之助著『道をひらく』。今から20年ほど前、上京する際に父親から手渡された一冊だ。初めて読んだのは中学生のときだったが、地元大分でナショナルショップを営んでいた父は、自分が大学に入る門出にあらためて同書を贈ってくれた、という。
「僕のバイブル。今も枕元に置いて、ときどき読み直しています。この本は読むたびに違った影響を受けますね」
景気が低迷しているときこそ、本書における松下幸之助の言葉は重みを増しているのではないか、と彼は続けた。
「景気がいいときは、古臭い本だと若い人に思われていたかもしれません。しかし『100年に一度の危機』と言われる今、企業はより厳選して人材を採用するようになる。そんなとき、当たり前のことを当たり前に続けてきた松下さんの姿勢を理解できる人は強い」
「当たり前のことを当たり前に続けること」の大切さ。例えばそれは実務のうえでも変わらないと、高橋社長は『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』を推す。彼いわく、インテリジェンスの全社員に配られたこともある「純粋な実用書」だ。
「例えばOutlookの整理の仕方ひとつとっても、使い方次第では仕事が驚くほどスムーズになる。転職の際はこうしたスキルが実は大事だったりします。転職後に以前いた会社のやり方しか知らないと、ルーティンの仕事に馴れるまでの間に、上司から『仕事が遅い人』と不当に思われることもあるからです」