アベノミクスにおいては、政策として機動的な財政出動が掲げられているが、日本国内でいくら公共事業を行ったところで、かつてのような経済効果は見込めない。もちろんそれは、安倍氏も麻生氏も理解しているはずであるる。日本が成熟した国家として物質的に充足した今、政府による需要創出には限界が来ているのだ。

ミャンマーにおける大型開発案件の受注が続くことによって、ゼネコン、商社、インフラ関連メーカー、建機メーカーなどの収益は大きく改善するはずだ。さらにこのスキームが優れているのは、日本企業のバランスシートを改善させるだけでなく、ミャンマーの経済発展に寄与し、ミャンマー国民にも歓迎されることだ。

さらに以下で述べるような、対中パワーゲームにおいても重要な布石となる。3つの目的において「賢い手法」なのだ。

オールジャパンでのミャンマー支援体制

先日、麻生氏に続き、柴山総務副大臣もミャンマーの首都ネピドーを訪れた。NTTデータ、NEC、日立製作所、東芝など20社以上の日系ICT(情報通信技術)企業を引き連れて、インフラ関連分野への技術の売り込みを行ったのだ。

この他にも連日、日系企業や地方自治体のミャンマー詣では続いている。政治家や企業だけではない。外務省、内閣府、財務省、経産省、総務省、国土交通省、法務省などの官庁から多くの官僚がミャンマー入りして、オールジャパンでのミャンマー支援の下地作りをしている。

もともと日本は、ミャンマー参入には後れを取っていたが、ここ半年で挽回し始めている。旧民主党政権時代から、各官庁縦割りではなくタッグを組み、オールジャパンによる支援体制を作ってきた。それは、今までの海外支援の形にはない総力体制を、ミャンマー政府に印象づけることに成功したからだろう。