「全員分の飲食代をまとめて、1人の幹事がクレジットカードで支払う」という部分が、この設問のミソなのである。

「カードで払えばポイントがつく」という利点はもちろん考えられるのだが、ここではあくまでより会計的な視点でそのメリットを探っていきたいと思う。

クレジットカードというものは、決済を行った月の翌月の10日、もしくは翌々月の4日というように、銀行口座からの引き落とし日が決められている。たとえば5月10日に飲み会が行われたとして、その代金引き落としが翌月の10日であれば、まるまる1カ月間も後に、実際の決済が行われることになる。

そして、ワリカン飲み会の支払い役は、その場で、自分を除く9人の飲み代を現金で回収することができる。そして、そうすることによって、自分の財布の中の「キャッシュ・フロー」が、大いに改善されるのである。

そもそもキャッシュ・フローとは、キャッシュ(cash=現金)のフロー(flow=流れ)という意味である。「キャッシュ・フローがよい」とは、かいつまんで言えば、現金がたくさん手元に入ってくること、「キャッシュ・フローが悪い」とは、現金が手元にない(つまり、どんどん出ていく)ことである。企業経営においては、「決算が赤字でも、キャッシュ・フローさえ確保されていれば、会社は潰れない」と言われるくらい、常に現金を確保しておくことが大切なのだ。

さて、飲み会の話に戻ろう。飲み会が行われた10日時点における支払い役のキャッシュ・フローは、4万5000円のキャッシュ・イン(入金)があり、逆にキャッシュ・アウト(出金)はまったくないということになる。したがって、支払い役を買って出た人のキャッシュ・フローは、4万5000円のプラスになる。

一方、支払い役にならなかった人の場合はどうなるのかというと、単に飲み代の5000円を支払うだけだから、キャッシュ・インはゼロで、キャッシュ・アウトが5000円。つまり、キャッシュ・フローはマイナス5000円になる。プラス4万5000円とマイナス5000円の差は大きい。このキャッシュ・フローを常にプラスにしておくという会計的な考え方が、会社経営を継続させていくうえでは、非常に重要になってくる。