韓国大統領就任予定(2月25日) 朴 槿惠(パク・クンヘ)
1952年、韓国・大邱市生まれ。故朴正煕元大統領の長女。74年、西江大学電子工学科を首席で卒業。同年母が、79年に父が暗殺される。98年、ハンナラ党から国会議員初当選。04~06年に同党代表。07年の大統領選挙党予備選で李明博氏に敗退。
韓国初の女性大統領で韓国初の2世大統領でもある。言わずと知れた、日韓基本条約を締結し、「漢江の奇跡」を実現した朴正煕(パク・チョンヒ)・元大統領の長女。朴正煕氏が師と仰ぎ日韓国交正常化のキーマンとなった岸信介氏の孫の安倍晋三内閣がほぼ同じ時期に誕生したことに、日韓関係好転の予感を持った人もいるかもしれない。もっとも、反日志向の強い韓国で「親日派の独裁者の娘」という血統は必ずしもプラスには働かない。
両親を暗殺され、自らも遊説中に暴漢から受けた60針もの傷をあごに残す「女丈夫」。文世光事件で母を殺害されたのちは、ファーストレディーの役割も果たした。父の暗殺の知らせに接しては、悲しみを口にするより先に北朝鮮軍侵攻を懸念したという逸話も残る。1998年に国会議員補欠選挙で与党ハンナラ党(現セヌリ党)から出馬し政界入り。政治家暦は15年だが、それ以上の貫録を備えている。
大統領選では、李明博氏の失政がたたり与党不利との観測もあったが、「選挙の神様」と異名をとる勝負強さと、野党勝利後に想定される「親北朝鮮化、財閥解体」を恐れる50代以上の保守派有権者の投票率アップにより大接戦を制した。だが若年失業率の上昇、高齢化、中小企業の低迷、不動産価格の下落、家計負債の増大と前政権の負の遺産は大きい。経済をGDP至上主義から生活の質重視に転換させようと「クネノミクス」政策を打ち出したが、果たして「漢江の奇跡」を再現できるか。内政の手腕次第では、反日世論を抑えて日韓関係改善へ舵を切る選択肢も出てこよう。そうなれば、領土をめぐり緊迫する東アジア情勢や北朝鮮問題にも影響を与えうる。新大統領は韓国のみならず、日本、東アジア全体にとってもキーパーソンである。