退職金1250万円は消え､妻は家を出ていった…会社をやめて夢の｢手打ちそば店｣を開いた元営業マン(59)の後悔 勤続37年のサラリーマンが､警備員の仕事をはじめるまで

経営は営業スキルだけではやっていけない

そして、坂口さんはずっと営業一筋だったという点も、失敗に拍車をかけてしまったのではないでしょうか。残念ながら、店の経営は長年培った営業スキルだけではやっていけません。

坂口さんは会計知識に乏しく、なにが原因で利益が上がらないのかを分析できていませんでした。固定費にはなにが含まれるのか、変動費はどうなのかなど、単純な収支管理だけでは難しかったようです。

定年したら、自分が一人で家族を養うという気持ちは一度手放したほうがいいでしょう。本人はよかれと思っても、定年後も家族に良い思いをさせたいというやさしさが、かえって裏目に出てしまいかねません。

人生100年とも言われる時代です。収入が減少する30年～40年の老後を充実させるには、やはりしっかりとした計画が必要でしょう。

まずは、“家族は一緒に人生を歩むパートナーなのだ”という意識をもち、話し合いの場を設けてください。パートナーや子供の意向にもしっかりと耳を傾けるということが最も重要です。

そのうえで、今の生活費はどれくらいなのか、住宅ローンはいくら残っているのか、老後資金はどのくらいあるのかなど、現状をちゃんと把握してください。

老後は生活費だけでなく、医療費や家族への資金援助、自宅のリフォーム、介護費など、意外と支出が増えがちです。安心した老後を過ごすためには、長期的な視点に立った資金プランが何よりも重要なのです。

坂口さんのように「そば屋」という大きな賭けをするかどうかの判断は、その先の話です。