「100歳になると優しくしてもらうことがいちばんうれしい」

後日NHKの取材でFさんを再び訪問する機会があり、普段の調査とは異なり、撮影しながらの雑談の時にいわれたことがあります。「優しさがいちばん」という言葉です。「この年になると優しくしてもらうことがいちばん嬉しい」、そして、「ご両親に優しくしてあげてね、優しさがいちばん」、Fさんはそう何度も繰り返したのです。

この言葉は、私の金科玉条となっています。決して守れているわけではなく、心がけている程度のものかもしれません。同じ台詞を同じ歳ぐらいの人にいわれてもそこまで心に刺さることはなかったかもしれません。やはり100年の人生を生きてきた人の台詞は重みが違います。彼女の人生も決して順風満帆であったわけではないでしょう。教えてもらわなかったことも多いと思います。そのように人生を過ごしてきた最晩年に話されることは本当に価値があると思います。