2050年には100歳以上の人が50万人を超えるという予測がある。高齢化社会の老いについて心理学的見地から研究する権藤恭之さんは「日本は長寿の人が多いにもかかわらず、『100歳まで長生きしたくない』と悲観して考える人が7割を占める。実際の100歳以上のシニアたちに対面したところ、たとえ体の自由が効かなくても、幸せな気持ちで生きている人がいることがわかった」という――。

※本稿は権藤恭之『100歳は世界をどう見ているのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

人生100年時代、ポジティブなイメージが長寿の秘訣に

100歳の人たちの話を聞き、100年の人生をイメージすることは私たちが老いを理解するために非常に重要なことだと思います。

なぜなら、「寝たきりになったり、人の世話になったりしたくないから、100歳までは生きたくない」というような長生きに対する否定的な見方は、将来的に国民の健康に悪影響を及ぼす可能性があるからです。「ステレオタイプ身体化理論」として知られる最近の加齢理論では、個人が持つ高齢期・高齢者に対するステレオタイプが、加齢プロセスに肯定的・否定的な影響を与えることが示されています。

たとえば、日本人を対象とした研究では、19年間同じ人たちを追跡したデータから、若い時に加齢に対してポジティブな態度を持っていた人たちは、ネガティブな態度を持っていた人たちと比較して4年長生きだったと報告しています。アメリカの研究ではその差はもっと開きます。

超高齢期の人たちに対するネガティブなステレオタイプの表れともいえる「100歳まで生きたくない」人の比率が高いことから想像すると、そのような考え方をする人が多いと健康度が下がりやすかったり早死にしたりする可能性もあります。平均寿命は延びていくのですから、ポジティブなイメージを持って、少しでも元気な期間を延ばしたいものです。

リビングに笑顔で座る高齢女性
写真=iStock.com/seven
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「長生きしたくない」と思っても、100歳超えの可能性はある

自分はそうなりたくないと思っていても、100歳を迎える可能性はどんどん高くなっています。親が長生きして100歳を超えることも多くなるでしょう。「人生100年時代」、あるいは「人生110年時代」に向けて、まずは100歳以上の人たちを知らなければなりません。

メディアでは100歳を超えて活躍している人たちがしばしば登場します。1992年に双子のきんさん(成田きん)、ぎんさん(蟹江ぎん)が揃って100歳を迎え、話題となってコマーシャルにも出演しました。覚えている人もいるでしょう。

それから30年が経ち、画家、音楽家、医師、文筆家などさまざまな分野で100歳を超える著名人が見受けられるようになりました。また運動の分野では、マスターズ大会の100歳以上の部で日本人が記録を出したことが報道されています。