早口ことばが認知症予防や物忘れ・滑舌の改善に

――川島教授といえば、2005年に登場したニンテンドーDS用ソフト『脳を鍛える大人のDSトレーニング』(任天堂)の監修を務めたことで知られる脳トレの第一人者ですから、説得力があります。

岸田:早口ことばによって認知症予防になったり、物忘れの改善になったり、滑舌がよくなったりする効果が見込まれるそうですよ!

70歳の人でも「早口ことば」を1~2週間続けると、個人差はあるものの50~60代くらいの脳の処理能力が得られたという研究結果も報告されているんだとか。

岸田:「文章を目で追いかけながら声に出して早く読むと脳が活発に働く」なら、どんな文章でもいいかというと……

そうではないからです! 人間って楽しくないと、なかなか続けることができない。

――「吾輩は猫である。名前はまだない」「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」とかを早口でナレーションしても脳に効果はありそうですが、何回も繰り返そうとはなかなか思わないですね。

岸田:そうなんです。「ついつい挑戦したくなる」「ついつい達成したくなる」「ついついみんなでやりたくなる」「しかも、言いながらついつい笑っちゃう」というあらゆる“ついつい”が無理なく続けるためのポイントだと考えました。

そこで、そんな早口ことばを作れる人って誰だろう? と考えた時に白羽の矢を立てたのが、早口ことば芸人の大谷健太さんです。

大谷さんは「早口ことば」を活用したフリップネタが注目を浴び、テレビ番組等に多数出演されています。なんと、2020年の「R-1ぐらんぷり」では敗者復活ステージを勝ち抜き、準優勝を果たした実力者なんです!

その大谷さんに「楽しくて笑えてハッピーになって、一人でも大勢でも楽しめる」早口ことばを難易度4段階で63個考えてもらいました。

――63個も!

岸田:早口ことばは、成功しても、失敗しても結局笑えるので、何回もやって攻略したくなる。もちろん編集担当である私も、今回の書籍制作を通して、早口ことばを猛練習しました。披露していいですか?

これは難易度2です。

「知事(ちじ)に直々(じきじき)にひじき」。

知事に直々にひじき

――早い。そして早口ことばのフレーズも面白いですね。

岸田:もう1つあります。難易度3です。

「笹刺(さささ)す猿(さる)笹刺さる猿笹刺さる猿さする猿」。

笹刺す猿笹刺さる猿笹刺さる猿さする猿

――すごい。無茶苦茶早い。

岸田:こうやって言えるようになると口が回るようになるし、早口ことばができる自分に自信が持てるようになるんです。会話ができなくなる理由って失言とか失敗を恐れることにもあるんですが、そこにも効果があると考えています。