Q 失敗すると評価が下がるので、チャレンジしたくないのですが?(32歳・男・金融)

まず、最初に伝えておきたいのは、失敗というのは「貴重な経験」だということです。

経営者という立場から言えば、致命的な失敗はダメだけど、少々の失敗は許されるという包容力のある企業風土をつくるべきだと思うんです。しかし、これが微妙なところで「包容力がある」というのと「甘い」というのはまったく別物でね。甘い企業風土で、失敗したからといって、ニコニコしていたら、どうしようもありません。

それに、ほとんどの人は失敗したときに自分のせいじゃなくて他人のせいにしてしまうものなんです。だから、せっかくの成長のチャンスを棒に振ってしまう。

そして、結局、また同じ失敗を繰り返す。それでは、失敗から学ぶことはできません。

ゴルフを例に取りましょうか。アマチュアの人は、自分のナイスショットしか覚えていないものなんです。ドライバーが凄くよく飛んだとか、ワンオンしたとか。失敗しても「風のせいだ」とか、「キャディが悪い」と、自分のミスに向き合いません。

ところがプロの人は、けっして失敗を忘れません。二度と同じシーンで失敗しないように必死で練習するんです。普通のビジネスパーソンにとってはゴルフは趣味ですから、コースの上ではいくら言い訳してもかまいませんが(笑)。でもね、自分のビジネス、自分の仕事となったら、言い訳はナシです。

だから、相談者の方も、失敗を大げさに考えすぎて足踏みするより、チャレンジして一歩前に踏み出す勇気を持ってほしいですね。

むしろ、日本の経営者やビジネスパーソンは目標達成のプロセスや個人の努力を評価しすぎる傾向が強いから、多少の失敗は評価を下げる要因にはならないかもしれません。

まぁ、そのせいで、日本人には「何が何でも結果を出す」というガッツや執念が足りないのも問題なのですが。

チャレンジにはリスクがあります。でも僕は、いい仕事をしようと思ったら、リスクは取らねばならないというのは真理だと考えています。僕も社員には「失敗しても命までは取られないから」と常々言っています(笑)。

失敗を恐れて何もしない人より、結果を求めて仕事を練りに練り上げ、それでも失敗をしてしまった人のほうが、次に成功する確率ははるかに高いのではないでしょうか。

※すべて雑誌掲載当時

ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正
1949年、山口県宇部市生まれ。早稲田大学卒業後、ジャスコに入社。その後、実家の小郡商事に入社。84年広島市にユニクロ1号店開店。91年社名をファーストリテイリングに変更。2002年代表取締役会長就任。05年より現職となる。
(構成=プレジデント編集部 撮影=大沢尚芳、小原孝博)
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