未払いでTwitter社の信頼は失墜したが…

「支払いを止める」と決断したのはイーロンです。

「さすがにこれはダメですよ」というものはフィードバックをして「じゃ、それは対応しよう」ということになるのですが、それでもなかなか振り込まれない。よくよく調べてみたら「振り込む予定だった人が辞めちゃっていた」といったこともありました。

「未払い」などというのは、ビジネス活動においては「破壊」です。企業の信頼が一瞬にして吹き飛んでしまう。

それでもその選択をしたのは「支払いが正しいかどうかを精査するため」でした。精査をして正しいものは払っていく。継続しなくていいものは継続しない。または今まで過分に投資していたものは、縮小したり、なくしたりしていく。「正しい取引であるのかどうかを検証できるまでは支払わない」というのが方針でした。このやり方はかなり極端だし、迷惑をおかけすることになりました。

会社支給のクレジットカードも止まった

この当時に会った日本の執行役員はこんなことを言っていました。

笹本裕『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)
笹本裕『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)

「このあいだ80人くらいで決起集会をやったのですが、30万くらいかかっちゃったんです。でもクレジットカードで払おうとしたら使えなくなってました……」

会社から支給されているクレジットカードが、Twitter社全体がクレジットカード会社に対して未払いなので使えなかったのです。だから、なぜか本人がブラックリストに載ってしまっているという、かわいそうな状態でした。結局、その役員は自腹でみんなにごちそうしたそうです。

毎月末に払うはずのオフィスの家賃も2カ月くらい未払いになっていました。イギリスのオフィスは、ピカデリーサーカスというところにあって、いわゆる一等地です。各地域のTwitterのオフィスは一等地にあります。

イーロンからしたら「赤字の会社なのに、それもどうなのか」という話なのでしょう。ピカデリーサーカスにあったオフィスが入っているビルは、英国王室の持ち物。「そこにオフィスが入っている」というステータスをイーロンはきっと嫌ったのだと思います。

かといって、それを未払いにするのは問題です。イギリスのオフィスに関しては訴えられたので、お支払いしたそうです。

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