南海トラフ地震はいつ起きて、どんな被害が想定されているのか。京都大学名誉教授の鎌田浩毅さんは「確実で具体的な地震予測はできないが、約10年後に発生し東日本大震災の10倍の被害が出ると私は考えている。約6800万人が被災する恐れがあるため、『自分の身は自分で守る』という意識を持って普段から防災を意識したほうがいい」という――。(第2回)
※本稿は、鎌田浩毅『M9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
巨大地震の発生前後には地震が多くなる
南海トラフ巨大地震は海溝型の巨大地震だが、陸上の直下型地震の発生と呼応する現象が確認されている。前回の南海トラフ巨大地震が発生する前に西日本各地で大きな内陸地震が相次いだ(図表1)。
そして、昭和東南海地震(M7.9、1944年)と昭和南海地震(M8.0、1946年)のあと数十年ほどの間この地域では大きな地震がなかった。それが阪神・淡路大震災(M7.3)以降には、2000年の鳥取県西部地震(M7.3)、2004年の新潟県中越地震(M6.8)、2005年の福岡県西方沖地震(M7.0)、2008年の岩手・宮城内陸地震(M7.2)などの地震が次々に起きた。その後は2016年に鳥取県中部地震(M6.6)と熊本地震(M7.3)が発生した。
すなわち、南海トラフ巨大地震が発生する40年前と発生後10年の間に、西日本の内陸部では地震発生数が多くなる傾向が見られるのである。こうした内陸地震はいずれも地表付近の活断層を震源とする。南海トラフ地震に比べて地震の規模は小さいものの、地表のすぐ近くで起こるため激しい揺れをともなう。そして活動期と静穏期は交互に繰り返されることがわかっており、現在は活動期にある(図表2)。