樹木葬、海洋散骨、手元供養、永代供養…何を選ぶか

お墓のトレンドが近年、目まぐるしく変化している。巨大納骨堂ブームが起きたのは10年前。だが、それも落ち着き、現在は樹木葬が主流である。個別墓がいいという人もいれば、合祀(合葬)墓を好む人もいる。なかには、海洋散骨や手元供養を選ぶ人もいる。とはいえ、はやりは「永代供養」だが、その意味を知る人はどれほどいるだろうか。墓の選択を間違えて失敗・後悔する人は少なくない。秋のお彼岸を前に2回にわたって、お墓のことを整理してみる。前編は「永代供養とは何か」。

無縁になった墓
撮影=鵜飼秀徳
無縁になった墓

内閣府の「高齢社会白書」(令和6年版)によると、団塊世代が75歳を超える2025(令和7)年には、高齢者(65歳以上)人口は3653万人に達すると見込まれている。高齢者人口は2043(令和25)年には3953万人でピークを迎える。この時の高齢化率は35%以上になっていると考えられる。

同時に、現在よりもっと長寿化が進む。2040年台には男性の平均寿命が84歳、女性は90歳の水準まで上昇することが見込まれる。こうした超々高齢化社会の構造は、例えるならば、上流から流れてきた川の水が、ダムによって堰き止められている状態に似ている。ダムの水かさが増せば増すほど、放水(死者)の量も増えていく。死亡数が出生数を上回る「多死社会」は、50年以上にもわたって続くとみられる。

「少子多死社会」においては、墓問題が深刻になる。自分たちの埋まる場所が必要になる一方で、墓守りをする子どもや孫世代が不足するからだ。

一昔前まで、遺骨の埋まる場所と言えば、菩提寺の一族の墓に入るか、新たに公共霊園などに墓地と墓石を求めてそこに埋葬されるか。それくらいの選択肢しかなかった。一族墓を継承するのは長男で、次男以降は新たにどこかの霊園に自分たちの墓を求めた。

ところが都会に出てきた核家族世代は、長男、次男を問わず「高額な土地付きの墓はいらない」「檀家にはなりたくない」などと考えている。そうしたニーズに応えるべく、急増してきているのが「永代供養」である。しかし、この仕組みがややこしい。

永代供養の定義は墓地管理者によって異なるが、概して①宗旨を問わない、②檀家になる必要がない、③料金を明示している、④供養の期間を設定している(期限が来れば合祀される)――ことが挙げられる。

墓を住まいで例えれば、旧来の「家墓いえばか」が、賃貸の戸建て。そして「永代供養」が、定期借地権付き物件と言い換えられるかもしれない。永代供養には、さまざまな埋葬形態がある。大きく分けて、個別納骨(露地型、納骨堂型)と、合祀である。

桜の木が植えられた樹木葬エリア
撮影=鵜飼秀徳
桜の木が植えられた樹木葬エリア

家墓は、区画の使用権を購入し、管理費を納め続ければ永続的に使用できる。永代供養墓は7年、13年、23年、33年といった使用期限が決められていることが多い。永代供養期限が過ぎた後には別の場所に移されて、合祀される。

それぞれ、メリットとデメリットがある。家墓は、区画料や墓石料などの初期コストがかなりかかるのが最大のデメリット。しかし、ひとたび家墓を設ければ、あとは管理費を払いさえすれば、何体でも納骨が可能になる。一族で守っていける体制であれば、将来的なコストや手続きは少なくてすむ。