飲み会で先輩から後輩に「継承」されてきたもの

――今回伺ったような「上司から評価されるコツ」や、社内の「見えないルール」を知っていれば、私も銀行を辞めなかったかもしれない、と思いました。

本来であれば、こうした仕事をするうえでのコツを「こっそり色々教えてくれる先輩」が職場にいれば、いちばん良いんだと思います。私自身、この本に書いたノウハウは全部飲み会で先輩から学んだものです。

「がんばっている自分をどう見せるか」とか、JTC特有の「見えないルール」みたいなものって、平場で言う話ではないじゃないですか。くだけた空間で先輩から「こっそり教えてもらう」ような話だと思うんです。「お前、あの時の言い方は良くなかったんじゃないか。明日謝っとけよ!」みたいな。

でも、コロナ禍以降は、気軽に飲み会に行くような場面が減っている。今の若い人たちは、こうした処世術を学ぶ機会も少ないと思うので、要領が悪くて空回りしていたかつての自分のような若手に役立ててほしい、という願いも込めて執筆しました。

「こっそり色々教えてくれる先輩」になってくれたら

――私はコロナ禍入社で、銀行在籍中はかなりの期間、緊急事態宣言が発出されていました。退職するまでの1年半あまりのうち、先輩と飲みに行った記憶はほとんどないです。

たこす『雑用は上司の隣でやりなさい』(ダイヤモンド社)
たこす『雑用は上司の隣でやりなさい』(ダイヤモンド社)

正直に言うと、コロナ禍が終わってからも、コンプライアンス過剰で、上司や先輩から後輩を飲みに誘うのが難しい状況は続いています。なので、ぜひ若手社員には勇気を持って先輩を飲みに誘ってほしいと思っています。JTCに勤める多くの会社員は、言ってしまえば「替えがきく仕事」です。だから仕事上のミスも再現性が高いものばかりで、先輩たちのアドバイスというのは、後輩社員にそのまま生きてくる。

今までは先輩から後輩への継承というのが自然に行われてきたんですが、コロナ禍で流れがピタッと止まってしまいました。なので、私が書いた本が読者にとっての「こっそり色々教えてくれる先輩」になってくれたら、と思っています。

伊藤滉一郎さん(左)、たこすさん(右)
撮影=プレジデントオンライン編集部
伊藤滉一郎さん(左)、たこすさん(右)
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