なぜ「若手のエース」ほど失速してしまうのか

――ノリと根性で数字を上げてきたMARCH卒の「ソルジャー」は、ある一定以上になると行き詰まってしまうことが多いということでしょうか。

前に挙げたような、お客さんとパチンコをして懐に入るといった営業スタイルの人は、小さい支店のエースにはなることもあります。ただし、そういう人が上場企業の担当になって活躍できるかというと、そういうわけでもないんですよね。

大企業相手となると、かかわるのは財務担当者などで、中小企業営業のように社長と直接かかわる機会もなくなります。「ノリの良さで懐に入る」という技が通用しなくなる。つまり、そこで「変化」が要求されるわけです。年次が上がっていくと若手時代のやり方が通用せず、うまくいかなくなってしまうケースも実はたくさんあります。

――逆に、超高学歴で地頭が良いのに地方の営業店に配属されて不適応を起こす、みたいなミスマッチも多いのでしょうか。

そもそも地方の支店で中小企業営業がやりたくて入社してくる人ってほとんどいないんですよね。リサーチ業務やプロジェクトファイナンスがやりたいと言って入ってくる新入社員が多いのですが、みんな最初は営業店に配属されていきます。

私は古い人間なので、最初は支店で下積みを重ねたほうが良いと思っています。なぜかというと、本部に行った後も「会社は支社の人たちありきである」という視点が持てるからです。ここ数年は新卒から本部に配属される人も何人かいるのですが、そのあたりの感覚がなく、何となく現場を軽視している人が多いと感じます。

銀行が立ち並ぶ通り
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欠点がない「スーパーマン」は役員になれない

――メガバンクのようなJTCでは、最終的にどんな人が出世するのでしょうか。

学歴の面で考えると、いちばん出世に強いのは早慶出身の人たちのように感じています。MARCHの人たちと同レベルの「コミュ力」を持っていて、場合によっては東大を凌ぐような頭脳を備えていることもある。良いとこ取り感がありますよね。東大生も、昔は学内の最優秀層がメガバンクに来ていたのですが、最近は上位層がコンサルやITなど他業界に行くので、中下位クラスの学生の入社が多いという事情もあるかもしれないです。

また、身もふたもない話なんですが、上司からも部下からも高い評価を受けている人格者で、コミュニケーション、地頭などすべての要素で欠点がない人はやはり出世していきます。ただし、みんなから慕われていて能力も高い「スーパーマン」でも役員まで出世する人は少ないという現実もあります。

順調に出世を重ねていって、最後に役員に上がるタイミングでは、現職の役員の推薦が必要になります。すでに役員の立場にいる人からすると、自分の存在を脅かす危険性のある「スーパーマン」は登用したくないという思いもあるようです。そのため、そつがないピカピカな人材より、能力が多少劣っていても自分を慕ってくれる人間味あふれる人が選ばれやすい。能力は前者のほうが上なのですが、実力通りにはいかないところが会社員人生のおもしろいところですよね。単に「オール5」を取れば良いというわけではないんです。