特殊相対性理論が当てはまる特殊なケース

まずは、特殊相対性理論から紹介していきましょう。そもそも特殊相対性理論の「特殊」とは、特殊な場合にのみ当てはまる理論という意味です。

一方、一般相対性理論は、特殊相対性理論をさらに発展させた理論であり、その名の通り、一般的なあらゆる場合に当てはまる理論です。

では、特殊相対性理論が当てはまる特殊な場合とは、どのような場合なのでしょうか。結論から言うと、物理現象を見る観測者が、「等速直線運動」をしている場合です。

等速直線運動とは、「同じ速さ(等速)で、まっすぐに進む(直線)運動」のことです。つまり、速さも向きも変わらないシンプルな運動のことです。

また、静止している場合も、ゼロという同じ速さで直進していると考えられるため、等速直線運動に含まれます。逆に、速度が変化したり、進む方向が変わったりする運動は含まれません。

ガリレオとデカルトによって発見された、「慣性の法則」があります。これは、「物体は外から力を加えない限り、もともと行っていた等速直線運動を続ける」というふうに表すことができます。

たとえば、摩擦力も空気抵抗も発生しない宇宙で、ロケットがエンジンを噴かさなくても、いつまでも一定の速度で飛び続けられるのは、慣性の法則のおかげです。

それに対し、物体に力を加えると、速さが増えたり進む方向が変わったりします。このような運動を、「加速度運動」といいます。

ここで覚えておいてほしいポイントは、特殊相対性理論は、観測者が等速直線運動をしている場合にのみ使える理論であり、一般相対性理論は、加速度運動をしている場合にも使える理論であるということです。

また、一般相対性理論は、特殊相対性理論では扱うことのできない、重力を扱うことのできる理論でもあります。

相対性とは「どちらも正しい」という意味

では、相対性理論の「相対性」とはどういう意味でしょうか。相対性という言葉を辞書で引くと、「他との関係の中にある(相対)という性質のこと」と出ます。

相対性の反対語は、「絶対性」です。それに対し、相対性理論における相対性とは、「どちらも平等に価値がある」「どちらも正しい」といった意味であると解釈すると、理解しやすくなるでしょう。

物理学の世界に、「相対性」という概念を最初に持ち込んだのは、ガリレオでした。「ガリレオの相対性原理」が発表されたのは、アインシュタインよりも300年以上も前のことです。ここで、再度、ガリレオの相対性原理について考えてみましょう。

ガリレオ・ガリレイ像
写真=iStock.com/FotoGablitz
※写真はイメージです

ガリレオが地動説を唱えたとき、次のように反論する人がいました。「地動説が本当ならば、仮に塔の上から石を落とした場合、石が落下している間にも地球は動いていることになるので、石は塔の真下ではなく、少しずれた場所に落ちるはずだ。なぜ、塔の真下に落ちるのか説明しろ」。それに対し、ガリレオは次のように説明しました。

「たとえば、一定の速度で、一定の方向に向かって走っている船に乗っている人がいるとする。その人がマストの上から石を落としても、塔の上から石を落とした場合と同じことが起こる。

つまり、船に乗っている人にとって、石はマストの真下に落ちているように見える。この船を地球に置き換えて考えればいい。地上の人にとっては、石は塔の真下に落ちているように見えるわけだ」。

それにしても、船が動いているにもかかわらず、石がマストの真下に落ちるのはなぜでしょうか。それは、石も船と一緒に進んでいるからです。慣性の法則により、石も船と同じ速度で前に向かって進みながら、落ちていっているのです。

つまり、私たちのいる場所が動いていても止まっていても、それが等速度である限り、そこで起こる物体の運動や法則は、私たちにとってまったく同じものに見えるということです。

これが、ガリレオの相対性原理です。ニュートンは、この「速度に、絶対的というものはない」というガリレオの相対性原理を土台にして、ニュートン力学を構築したのです。