ケガをした場合、どう処置するのが正しいのか。医学博士の柳澤綾子さんは「実は感染の起きていない傷口を消毒すると、むしろ細菌感染を誘発することが分かっている」という――。

※本稿は、柳澤綾子『身体を壊す健康法 年間500本以上読破の論文オタクの東大医学博士&現役医師が、世界中から有益な情報を見つけて解き明かす。』(Gakken)の一部を再編集したものです。

「ケガをしたらすぐ消毒」は正しいのか?

ケガをした時は、アルコールや市販消毒液で消毒しましょう。そう思っていませんか?

コロナ禍を経験した今だからこそ、そんな我々だからこそ、消毒には敏感になっています。

では擦り傷や切り傷、子どもは特に傷に入った砂やどろんこもですね、そういったものの対処法について一緒に考えてみましょう。

擦り傷の対処法とは(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/recep-bg
擦り傷の対処法とは(※写真はイメージです)

細菌感染はどんな場合でも発生するわけではない

そもそも擦り傷や切り傷ができた場所は、皮膚が損傷して、皮下の組織、すなわちカバーされていない組織がき出しになっている状態です。

柳澤綾子『身体を壊す健康法 年間500本以上読破の論文オタクの東大医学博士&現役医師が、世界中から有益な情報を見つけて解き明かす。』(Gakken)
柳澤綾子『身体を壊す健康法 年間500本以上読破の論文オタクの東大医学博士&現役医師が、世界中から有益な情報を見つけて解き明かす。』(Gakken)

ここには血液や間質液といった栄養たっぷりの液体がふんだんにあり、なおかつ体温はいい感じに温かく、湿っています。

この湿度や温度が一定に保たれた環境で細菌感染が起こった場合、細菌にとってはかなり住みやすい環境となります。そのため、医療行為によって生じた傷、すなわち手術創などであったとしても、この細菌感染はとても気をつけなくてはいけない問題です。

ただ、細菌感染はどんな場合でも傷さえあれば発生するというわけではなく、「細菌数」「創環境」「防御力」の3つの要素のバランスによって起きるかどうかが決まるのです。