「消毒するほうが感染する」ことがわかった

しかし4日後にその傷の感染率を見てみると、なんと消毒液で消毒した群では100%細菌感染していましたが、生理食塩水で洗っただけで消毒はしていない群では全く感染していないということがわかったのです。

むしろ傷は消毒するほうが感染するということがわかり、大変な衝撃が走りました。

一般的に使用するものよりももっとずっと薄い消毒液を使用した場合であっても、どうやら傷を治すために必要かつ重要な働きをする線維芽せんいが細胞の増殖を抑制しているという報告(※2)もあり、さらには細菌と戦うために必要な白血球やマクロファージ(免疫機能を持つ大きめの細胞)にも有害らしい(※3)こともわかってきました。

※2 Balin AK, Pratt L. Dilute povidone-iodine solutions inhibit human skin fibroblast growth. Dermatol Surg. 2002 Mar;28(3):210-4. doi: 10.1046/j.1524-4725.2002.01161.x. PMID: 11896770.
※3 Van den Broek PJ, Buys LF, Van Furth R. Interaction of povidone-iodine compounds, phagocytic cells, and microorganisms. Antimicrob Agents Chemother. 1982 Oct;22(4):593-7. doi: 10.1128/AAC.22.4.593. PMID: 7181472; PMCID: PMC183798.

消毒液を使うと感染を誘発する

これらの研究から、感染の起こっていない傷(今切れたばかりや擦りむいたばかりといった)に消毒液を使うことは、細菌感染予防効果は全くないどころかむしろ、感染を誘発する作用があることが徐々に明らかになってきて、世界中の医学界が大きな方向転換を余儀なくされたのです。

「消毒するほうが感染する」ことがわかった(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/bymuratdeniz
「消毒するほうが感染する」ことがわかった(※写真はイメージです)