“サブスクの弱点”をどうやって克服したのか

その価値というのが、2つ目の要因になります。チョコザップが提供する価値は、サブスクに「加入する前のフェーズ」と「加入した後のフェーズ」で考えることができます。

加入する前のフェーズでは、月額料金が極めて低額であるという価値に加え、“服装自由、靴の履き替えも不要”にすることにより、フィットネスクラブに通うハードルを下げることで、顧客が入会しやすくなる価値を提供したことです。これにより、会員の裾野が格段に広がることになりました。

他方、加入後のフェーズですが、ここでは利用者や会員に「継続購入」してもらうための満足感を訴求し続けることで、「顧客ロイヤリティ」を醸成することが重要となります。

製品やサービスに一度や二度満足しても、逆に利用者の期待値は上がりますので、同じもので常に満足してもらえるとは限りません。

加入後の満足感には、加入前の定額によるお得感は含まれませんので、継続して利用者に喜びを与え続ける何らかの「サービス化」(顧客価値の創出)が必要になります。

チョコザップは、ウェイトトレーニングの他に会員が享受できるサービスメニューを定期的に投入することで、継続的なサービス化を図りました。

ウェイトトレーニング
写真=iStock.com/Marc_Osborne
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脱毛、ランドリー、ワークスペース、カラオケまで…

そのサービスメニューとは、エステ、ネイル、脱毛、ホワイトニング、カラオケ、ピラティス、ランドリー、ゴルフ、ワークスペース、ドリンクバーなどで、これまで、こうしたメニューを増やし続けていくことで、常に高い顧客満足度を実現する状況を作り出しています。

実際、高い顧客満足度は、退会率(ライザップ2024年3月期決算説明会資料)に表れており、2024年3月の退会率は、0.71%(※)と非常に低い数値を維持しています。

※当月の退会数を前月末時点でのアクティブ会員数(退会者を含まず)で割った数値で2022年7月の値を1.00としたときの指数

ただ、これらのサービスを「24時間使い放題」と、いつでも自由に利用できると消費者に誤認させる表示を自社サイトやインフルエンサーを使ってPRしたことから、8月9日には景品表示法違反で消費者庁から再発防止を求める措置命令も受けています。チョコザップ躍進の背景には、こうした電車の中吊り広告やSNSなどを使った大規模な広告戦略をとっている点も見逃せません。