そこで有巣氏は、地域の人に愛されながらも惜しまれつつ廃校となった小学校を「世界中からウイスキーファンが訪れる、多くの人に愛されるウイスキーの学校にしたい」との想いを発信した。どれくらいの支援が集まるか最初は不安だったが、結果的に3760万円が集まった。有巣氏の想いにたくさんの人たちが共感してくれたのだ。
このプロジェクトは、サポーターからの支持や応援購入総額、社会的なインパクトの大きさが評価され、「Makuake Of The Year 2023」の1社として選出されている。
「ようやくスタートラインに立てた」
その後、クラウドファンディングの成功もあって、懸案だった資金調達の目途が立ち蒸留設備の設置も無事完了した。2023年5月に飛騨高山蒸溜所として本格稼働を開始。いまも順調に生産を続けている。最近では、蒸溜所見学会のバスツアーが開催されており、多くの人がこの蒸溜所を訪れている。
2026年の秋頃には、シングルモルトウイスキーが最初のオリジナル商品として出荷される予定だ。
ウイスキーはその土地風土が作り上げる酒と言われている。飛騨の清らかな水により造られ、雄大な森と湿潤な風土に育まれた岐阜県初となる本格製造のシングルモルトウイスキーは、しっかりとした味わいと甘みを感じさせる製品に仕上がるはずだ。
有巣氏は、同社を総合ジャパニーズアルコールメーカーとして位置づけ、これからの構想を考えている。
「今はとりあえずようやくスタートラインに立てたところですね。でもまだまだこれからが本番です。日本酒とウイスキー、事業特性の異なるこの2つのビジネスを融合させて新たな価値提供を図っていきたいですね。具体的には、ウイスキーの特長である貯蔵の要素を日本酒に取り入れることも考えています。一例ですが、樽のフレーバーを日本酒に漬けたものを商品化してみるのも面白いかなと思っています」
「そして、今後は商品造りだけでなく、そのバックにあるストーリーも含めた体験を共有しながら付加価値を提供していきたい。例えば、日本酒の酒造り体験ツアー、ウイスキー蒸留所のある自然環境豊かな場所でのグランピング体験などです。実現にはまだまだ時間がかかりますが、当社が総合ジャパニーズアルコールメーカーとして生き残っていくために、そんなことを毎日考えています」