初公開「ドーパミンを出すための具体的な手順」

ドーパミン・コントロールの具体的な方法は次のとおりです。

ステップ① 自己暗示をかける
ステップ② スモールステップに分ける
ステップ③ ドーパミンを分泌させる

この①~③のステップのサイクルを繰り返すことで、ドーパミン・コントロールを習慣として定着させられるようになります。これをドーパミン・サイクルと呼んでいます。

ステップ① 自己暗示をかける

ドーパミン・サイクルを、ステップごとに見ていきましょう。

まずは「ステップ① 自己暗示をかける」です。

ドーパミン・サイクルを循環させるきっかけとして、自己暗示(self suggestion)は極めて重要です。世界で初めて「自己暗示を治療にかした」と言い伝えられている、19世紀生まれのあるフランス人について、触れておきましょう。

彼の名は、エミール・クーエ。もとは薬局に薬剤師として勤めていましたが、あるお客さんに薬を売ったことがきっかけで暗示の威力に気づきます。そして薬剤師という安定した職をなげうち、心理療法での治療を始め、多くの心身の病気を治します。その理論と体系は、後に「クーエの暗示法」として世界中に広まりました。

彼に暗示の力を気づかせたのは、あるお客さんでした。そのお客さんがほしいという薬の期限は、たまたま切れていました。そこで、「効き目がないだろう」と判断したクーエは販売を断ります。

ガラス瓶が入ったドクターバッグ
写真=iStock.com/ehrlif
※写真はイメージです

「薬ではなく、暗示が病気を治したのではないか」

しかし、そのお客さんはしつこく食い下がります。クーエは仕方なく、期限切れの薬を売りました。するとどうでしょう。後日、そのお客さんが「治りました」とお礼の挨拶あいさつにきたのです。

それからクーエは、「薬そのものの効果ではなく、『治るはず!』という強い思い(暗示)が、病気を治したのではないか」と考えるようになります。

このエピソードから「偽薬効果(プラシーボ効果、プラセボ効果)」(placebo effect)という言葉を連想される方も多いかもしれません。偽薬効果とは、ニセの薬を処方しても「薬」と信じることで、症状に何らかの改善が見られる現象のことです。

偽薬効果という言葉が広まったのは20世紀。1955年、アメリカ・ハーバード大学医学部の麻酔科医、ヘンリー・ビーチャー氏が『JAMA』(米国医師会雑誌)に「強力なプラセボ(The Powerful Placebo)」という有名な論文を発表しました。

手術後の疼痛とうつう、せき、頭痛、不安、かぜなどさまざまな症状に対して、なんと21~58%もの偽薬効果が認められています。