ポジティブな暗示をかける「魔法の言葉」
ところで、クーエの暗示法とはいったいどのようなものだったのでしょうか。その方法は短いワンフレーズに凝縮されています。
「私は毎日あらゆる面でますますよくなっている」(Day by day, in every way, I'm getting better and better.)
この言葉を、繰り返し唱えるスタイルが、クーエの暗示法の真髄です。
大事なことは、起床後や、就寝前などのリラックスしたときに、約20回、この魔法の言葉を実際に声に出して繰り返すこと。その理由を脳科学的に説明すると、次のようなことになるでしょう。
リラックスした状態ほど、脳に言葉を浸透させやすいから。また、言葉を耳で聞くことで、「聴覚」に働きかけ、脳に強烈に刻み込むことができるからです。
クーエは、次のような心強い言葉も残してくれています。
「あなたが何かを行うとき、『簡単にできる』と自分自身に言い聞かせなさい。そうすれば、それは本当に簡単になる」
暗示法の始祖、クーエから、私たちが学べることは大きいと言わねばなりません。
ドーパミン・コントロールを実践していくときは、
「△△を○分で行う」
「今日は◇◇を必ずやる」
などと、声に出して「小さな目標」を言うようにしてください。その回数を増やすことができれば、一層効果的です。脳は怠け者なので、何度も声をかけてやる必要があるのです。
大きな目標を「小さな目標」に細分化する
次に、「ステップ② スモールステップに分ける」を見ていきましょう。
ドーパミンを思いどおりに出すために、神経学者のジュディ・ウィリス氏は、「小刻みに目標設定すること」をすすめています。いわゆる「スモールステップ法」(small-step method)です。
大きな目標に突然挑むのではなく、小さな目標に細分化する。そして小さな目標を達成するたびに、喜びを感じる。つまり小さな成功体験でよいので、こまめに積み重ねていくのです。
目標の重要性や達成度の大きさではなく、フィードバックの回数の多さを重視してください。
目標が大きくなればなるほど、達成までには時間がかかるもの。「待ち遠しい」という心境を通り越し、「待ちきれないから、どうでもいい」という“無関心モード”に変わってしまいます。
たとえば、30代にさしかかった人が「部長になりたい」という夢を掲げたとしましょう。その組織の中で部長になるまで、いったい何年かかるでしょうか。「年単位」の大きな目標だけだと、あまりに遠すぎて、人はモチベーションを保てなくなってしまいます。
「部長になりたい」という夢はそのままでかまいません。
ぜひ、それを小分けにする作業を行ってみてください。
「年単位」「月単位」「日単位」、それくらい細かなステップに分けることができれば、大きな目標の実現性はぐんと高まります。