「ミスが出ても勝つ」が慶應の野球
仙台育英との夏の甲子園決勝は、丸田湊斗(慶應義塾大)の先頭打者ホームランに始まり、自分たちの流れで試合を運ぶことができた。
とはいえ、すべてがうまくいったわけではない。守備のミスがあり、決勝の大舞台で4エラー。「4エラーでの優勝なんて、過去にないんじゃないですか」と、森林監督は語るが、それでも勝ったことが大きい。
「ミスがあっても勝てた。ミスをしても日本一になれた。『ミスが出ても勝つ』という話はずっとしてきて、それが決勝でできたのは、ある意味うちらしい戦いでした」
高校野球を見ていると、「ミスをしたほうが負ける」「ミスが勝敗を分ける」「あのミスがなかったら……」と言われることが非常に多い。でも、野球そのものはミスが多い競技で、バント失敗があれば、守備のエラーもあれば、走塁ミスも付き物だ。そもそも、技術的にも精神的にも未熟な高校生がプレーしていることを考えれば、「え?」というようなプレーは起こりうる。
「まぁ、ミスしていいわけではないんですけど、試合中に引きずっても仕方がないんですよね。終わったことはもう忘れて、次に向かう。反省は試合後にする。そのスタンスを貫いていました」
ミスしても3秒で切り替える
チームで徹底していたのが、「3秒ルール」だ。何かミスが起きた場合には、3秒で次に切り替える。空を見るのもよし、声を出すのもよし、何でもいいので自分なりの切り替えのルーティンを作っておく。
この思考のベースとなっているのが、2021年の夏から取り入れたメンタルトレーニングだ。「SBT」(スーパーブレイントレーニング)を指導する吉岡眞司先生からさまざまなアドバイスをもらい、心の持ち方を学んでいる。うまくいかないとき、劣勢のときこそ、心をプラスにして、自分たちでいい雰囲気を作り出す。劣勢の場面で心まで沈んでしまえば、より暗くなるだけだろう。