上司に学んだ「CM的説明話法」

【真に伝わる表現力を磨く方法④】望遠レンズでズームするように「伝えたいこと」に迫る
●相手に情景やその場の雰囲気を伝えるのが苦手
●「見てほしいのはここだ!」と思っているのに伝わらない
●ありありと具体的に、文章を書くことができない あなたへ

出張で見た現地の様子を上司に説明するとします。あなたは、上司が「自分自身が訪れた」と勘違いするほど、リアルに情景を伝えることができますか? 伝えるのが上手な人は、これが得意です。上司の脳内スクリーンに、現場の状況・雰囲気・温度感までをも伝えることができます。伝え方上手な人は、五感に訴える力をもっているのです。

「自分の言いたいことを、相手の頭上に白いスクリーンがあると思って、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚、全部を使って映像化しろ」。これはCMプランナーになりたての頃、上司に学んだ「CM的説明話法」です。

×「あったかいうどんを急いで食べた」
○「メガネがくもるような白い湯気の出る丼に、顔をつっこんでハフハフ言いながらうどんを食べた」

スクリーンにどちらのほうが、情感をもって伝わるかは一目瞭然です。ここで、色・音・匂い・味・触り心地を入れます。広告の世界では、ステーキ肉がジュージュー焼ける音を描写して相手の食欲を刺激するのが伝え方の鉄則。このときの「ジュージュー」という音を「シズル」と言います。

「の」を使って、見る対象にズームする

次は「『の』ズーム」という手法です。長く子どもの作文を見ている私は、文章が上達する子には法則があることを発見しました。

×「水族館にいたイルカが、かわいかった」
○「水族館にいたイルカの目が、かわいかった」

「~の~」と「の」で対象にズームしています。「イルカがかわいい」は誰でも書ける。しかし「イルカの目がかわいい」となるとその子オリジナルの視点がある。このわずかな違いが、相手に情景を的確に思い起こさせる差になるのです。

POINT① 相手の頭上のスクリーンに向かって話す

相手の頭の上に白いスクリーンがあると考える。そこに五感を使って「シズル感」のあるCMを映し出すように語る。これができると、文章から音がする、匂いがする、注目するポイントが目に飛び込んでくる。臨場感のある文章が書けるようになります。

POINT② 「の」ズームで、あなたの考えが伝わる

対象物を「の」でぐっと近づけることで、伝えたいものがはっきりします。「このコートが好き」→「このコートの襟元が好き」、「ここのラーメンが好き」→「ここのラーメンのスープが好き」、「この町が好き」→「この町の空の広さが好き」とズームすることで、好きなポイントがわかる。あなたが何を考えているか相手に具体的に伝わります。

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