ワゴンR運転の祖父も書類送検された理由

この事故では、ワゴンR運転の祖父も過失運転致死傷の疑いで書類送検されていたが、今年3月28日付で広島地検福山支部は不起訴処分としている。「情状全般を考慮」したことが理由だ。

書類送検された理由は、右折する際に前方をよく見ていなかったこと。また、判決の理由では触れていなかったが、9歳の孫にシートベルトまたはジュニアシートを装着させていなかった過失も考慮されたと考えられる。

この右直死亡事故を保険会社はどのような過失割合としたのか? 全く公開されていない情報であるため、筆者の知人である損保会社の幹部社員やベテランのアジャスターに過失割合や衝突時の状況をどう考えるか聞いてみた。彼らの回答をまとめると以下となる。

急ブレーキをしても衝突は不可避だった

「右直の事故であれば一般的な過失割合は直進車20:右折車80。これを基本として速度や曲がり方などを検証した上で決められます。同乗の孫にシートベルト(ジュニアシート)を装着させていなかったことも過失相殺の対象になり、20%程度と考えられます。バイク事故でヘルメットを着用してない場合と同様です。

しかし、この事故ではフェラーリが制限速度(50km/h)の2倍以上の120km/hという速度を出していた事実があるため、過失割合は大きく変わってきます。

フェラーリは38.5m前で右折してくるワゴンRに気づいて急ブレーキをかけたとのことですが、120km/hは秒速33.333mです。38m手前での急ブレーキでは衝突回避は不可能でしょう。また、ブレーキが掛かり始めるまでの空走時間は判例などで平均0.75秒とされています。そこを考えると衝突時の速度は120km/hからほとんど落ちていなかったと思われます。

ワゴンR側にも落ち度はありますが、過去の裁判でも秒速33.3333mで走ってくるクルマの予見可能性は相当に低くなると判断されて過失割合は下がるでしょう。フェラーリのように車高の低いクルマであれば実際の位置よりも遠くに見えるためワゴンRも『右折できる』と判断を誤ったのでしょう」

事故現場の交差点で右折する車両
撮影=加藤博人
事故現場の交差点で右折する車両(ナンバープレートを加工しています)