優秀な若手ほど、官僚の仕事に愛想を尽かして辞めていく

一方で、業務量は増え続けているため、慢性的な長時間労働になっている省庁も少なくない。優秀な若手ほど、官僚の仕事に愛想を尽かし、辞めていく。ここ数年、総合職試験で採用された官僚が毎年100人以上、中途離職し、一向に減る気配がない。

民間から人事院総裁になった川本裕子氏は3年間にわたって改革の旗を振るってきたが、官僚離れに歯止めはかかっていない。川本総裁も問題は分かっていて、「年次主義からの脱却」などを事あるごとに訴えている。

川本裕子人事院総裁(右)に中間報告を手渡す「人事行政諮問会議」の森田朗座長=2024年5月9日午後、東京都千代田区
写真提供=共同通信社
川本裕子人事院総裁(右)に中間報告を手渡す「人事行政諮問会議」の森田朗座長=2024年5月9日午後、東京都千代田区

日本経済新聞のインタビューに答えた川本総裁も、「年次主義からの脱却は大事だ。年功序列は若手のやる気をそいでいるといわれる。若手をひき付ける職場をできるだけ早く実現したい」と語る。だが一方で、「本来、国家公務員法は年功序列を重視していない。職務給の原則を明言し、職務ベースの人事管理や報酬水準設定を想定している」とも言う。つまり、日本の官僚の人事制度は法律に問題があるのではなく、その運用に問題があるのだ。戦後70年積み上げてきた官僚の「不文律」が、年次主義を絶対的なものにし、若手の能力を評価し活用することが難しい組織にしてしまったのだ。

「安定性」はマイナス面が際立つようになった

川本総裁が設置した民間人5人からなる有識者会議「人事行政諮問会議」(座長・森田朗東大名誉教授)が5月にまとめた中間報告でも、「在職年数に基づく年功的処遇を脱却し、能力・実績主義を徹底」、「職務内容や必要なスキルを明確化し、職務に応じた報酬水準を設定」といったことがうたわれている。

大学卒業年齢に相当する22歳の人口は昨年10月時点で126万人。4年後には110万人を切る。人口規模が1割以上減るのだから、優秀な若手人材の獲得競争が激しさを増すのは明らかだ。仕事で成果を上げても普通にこなしていても、昇進や給与に大きな差はなく、報酬も少しずつ上がっていく。かつては魅力だった官僚の「安定性」は、今やマイナス面が際立っている。答申を受けて人事院が抜本的な人事制度の見直しに踏み出すことができなければ、早晩、日本の強みと言われた官僚機構は瓦解がかいしていくだろう。

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